バランス理論

バランス理論の定義

バランス理論とは、ハイダー,F.が1958年に提唱した対人関係に関する理論の1つで、自己(P)と他者(O)と事物(X)の関係性を扱うP-O-X理論とも言われるものです。

バランス理論においては、人間はバランスが取れた状態を好むものだと考えます。
そのため、何かのバランスが崩れて不均衡が生じると、人はどうにかしてその状態を解決しようと試みるものだと考える理論です。

ハイダーは、他者や物事に対する関係性について心情関係と単位関係とに分けました。
心情関係は、対象となるものに対する情緒面での関係性のこと言います。

これは、好きである、尊敬する、興味があるといった好意的な側面はプラスの要素となり、嫌いである、軽蔑する、認めたくないといった非好意的な態度はマイナスの要素となります。

単位関係は、対象との関係性を「似ている」「所属している」など、1つのまとまりとして感じることができるかどうかという面により表されます。

対象と同じ会社に所属して親近感がある場合などはプラスの要素となり、逆にまったく関係ない仕事をしている場合などはマイナスの要素となります。

バランス理論の関連キーワード

  1. ハイダー,F.
  2. 対人関係
  3. 心情関係
  4. 単位関係

バランス理論の補足ポイント

単位関係であれ心情関係であれ、P-O-Xのそれぞれの関係において肯定的な感情を抱くことを(+)として、否定的な感情を抱くことを(-)とします。

例えば、私(P)はある俳優(O)のことが好きであれば、P-Oの関係は(+)と判断します。

P-O-Xの3つの関係が全て(+)になった状態か、1つが(+)で2つが(-)となっている場合をバランスが取れた状態と考えます。

つまり、掛け算をして+になる場合が、バランスのとれた関係性と考えるわけです。

 
自分(P)は恋人(O)のことが好きだけれど、恋人(O)が着ている洋服(X)は好きではないという状況を例として見てみましょう。

この場合は「自分と恋人は(+)の心情関係」、「恋人とその洋服は(+)の単位関係」そして「自分と恋人の洋服は(-)の関係」です。

掛け算をしてみると(+)×(+)×(-)=(-)となり、自分にとっては心地よい状態ではないと感じられるはずです。

そうなるとこの状態を改善しようとする気持ちが働き、恋人の服のセンスを理解しようと努力する、恋人のことが好きではなくなる、恋人に違った服を着るように働きかける、といったことを試みるようになるでしょう。

恋人はこういう服が大好きと言っているけれど、バイト先のブランドだから仕方なく着ているだけだと考えて、自分を納得させる妥協案に落ち着くこともあるかもしれません。

MEMO

態度と態度変容に関連するさまざまな学説のことを認知的斉合性理論と言い、バランス理論の他に、フェスティンガー, L.の認知的不協和理論もこれに含まれます。

認知的斉合性理論は、ゲシュタルト心理学や場の理論、グループダイナミクスなどの影響を受けて生まれました。

この理論においては、人は他者との間に認知の矛盾がある場合だけではなく、自分の心の中の認知要素の間に矛盾があればそれを解消し、緊張状態を緩和させようとするものだと考えられています。