選択的注意

選択的注意

選択的注意の定義

選択的注意とは、多様な情報が渦巻くような環境条件下において、その個人にとって重要だと認識された情報のみを選択し、それに注意を向ける認知機能を指す概念です。

例えば、パーティ会場ではあちこちで賑やかに談笑が行われ、かなり騒々しい状態になりますが、そのような中でも誰かと話に夢中になっているときには、周井の話し声やざわめきはあまり気にならないものです。

ところが、隣のグループが自分に関する話題を話していることにふと気づくと、その人たちの声が急に大きくなったわけではないにもかかわらず、話されている内容が耳に入ってきて理解できるようになるということがあります。

こうした、特定の会話に注意を向けることができる現象がカクテルパーティ効果と呼ばれるもので、選択的注意の代表例とされています。

選択的注意の関連キーワード

  1. カクテルパーティ効果
  2. 両耳分離聴の実験
  3. ブロードベント,D.E.
  4. 記憶のフィルターモデル

選択的注意の補足ポイント

左右の耳に別々の文章を聞かせ、片方の耳から聞こえた内容だけを後で追唱させると、指定した耳から聞かされた文章は追唱できるのに、反対の耳から聞かされた文章はまったくといっていいほど聞き取れないという、チェリー,E.C.による両耳分離聴の実験も選択的注意の1つとして有名です。

この両耳分離聴の実験において、追唱しなかったメッセージにピーという機械音を挿入したところ、この音が含まれていることに被験者は気づくという結果が得られています。

したがって、注意が向けられていない情報に対しては、物理的な情報の処理はなされているけれども、意味的な処理がなされていないということが分かります。

 
チェリーの研究結果を踏まえ、選択的注意の原理から、ブロードベント,D.E.らは、記憶のフィルターモデルと呼ばれる、注意の理論を提起しました。

記憶のフィルターモデルは、記憶の流れに関するモデルで、視覚や聴覚といった感覚受容器が受け取った多様な情報が、感覚記憶から短期記憶の貯蔵庫、あるいは長期記憶の貯蔵庫に移行する際に選択的注意が働くとされています。

情報処理の初期の段階に、次の段階で処理されるべき情報を選択するフィルターの存在が仮定されていて、すべての入力刺激に対して、物理的特徴の処理などの低次の情報処理はなされますが、意味的処理などの高次の情報処理は、そのフィルターを通過した情報のみに対して行われ、短期記憶や長期記憶として貯蔵されると、ブロードベントは説明しています。

 
ただし、この後、フィルターモデルで説明できないような実験結果が得られており、フィルターにより完全に排除されるのではなく弱められるだけだと考える「減衰モデル」や、情報の重要度によって反応が決定されるという「最終選択モデル」などが提起されています。

MEMO

企業がウェブサイトで自社製品の宣伝をしたい場合、顧客が求めている情報を適切なタイミングで呈示できれば、顧客が自社製品の情報に選択的注意を向けてくれる可能性が高まります。

見てほしい情報を顧客に見てもらうための方法の1つが、選択的注意を促すことです。
例えば、ウェブサイトにポップアップで情報やリンク先を表示するといった方法が考えられます。

顧客としても、何かの情報を探している時は、ウェブサイトのどこを見ればよいのかがわかるようにアシストしてもらえると、とても助かるでしょう。

企業が見てほしい情報と顧客が探している情報が合致していれば、選択的注意を喚起する仕組みをウェブサイト上に組み込むで、情報の受け渡しを生産的に行うことができるわけです。