アンダーマイニング効果の定義
仕事や勉強を終えればご褒美がもらえるとなるとやる気が出てくる、そう考えるのは当たり前のことのようにも感じられます。
しかし1970年代ごろ、作業後に報酬があることが必ずしも意欲を高めることにはつながらず、むしろ自発的なやる気を低めてしまう可能性があるという知見が出てくるようになりました。
このように報酬が自発的に何かをしようという意欲を低める現象のことをアンダーマイニング効果と言います。
アンダーマイニング効果の関連キーワード
- 報酬
- 内発的動機づけ
- エンハンシング効果
- 自発的行動
- レッパー,M.R.
アンダーマイニング効果の補足ポイント
報酬を得るため、または罰を回避するためといった理由ではなく、自らやりたくて何かをしようとする意欲のことを心理学では内発的動機づけと呼んでいます。
特に収入につながるわけではなくても、自分の楽しみのために楽器を練習したり演奏したりすることは、音楽をやりたいという内発的動機づけがあるからだと言えます。
そうして単に音楽を楽しんでいた人が、ある時演奏料をもらう機会があったとして、その後は以前のように練習に身が入らなくなったとしたら、アンダーマイニング効果が生じているということです。
しかし、演奏料などの報酬ではなく、褒め言葉などの言語報酬をもらった場合は内発的動機づけを高める(エンハンシング効果)という知見も得られています。
アンダーマイニング効果について、レッパー,M.R.らの有名な研究があります。
レッパーの研究では幼稚園児に絵を描いてもらうことにして、その中で「絵を描いたらご褒美をあげる」と約束する群、そうした約束はせずにただ絵を描いてもらう群(この2群はいずれも絵を描いた後にご褒美をあげます)、そして事前にご褒美の話もしないし、絵を描いた後も特にご褒美をあげない群の3つに分けて実験を行いました。
上記の絵描きの手続きが行われた後、自由時間に幼稚園児たちの様子を観察してみると、あらかじめご褒美を約束されて絵を描いた群では、他の群に比べて自発的に絵を描く時間が短いという結果が得られました。
事前にご褒美があると約束されたわけではなかった2番目の群の子どもたちは、自発的に絵を描く時間が短くなることはなかったようです。
したがって、事前にご褒美が約束されて何かを行うという経験をすると、その後はご褒美がなければ自発的に行動はしなくなる可能性があると示されています。
この研究が公表されるまでは、人は報酬があるとやる気が高まるという考えが主流でしたが、そうではないという結果が出て注目を集めました。
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