不登校の定義
文部科学省では、不登校児童生徒とは「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義しています。
学校での対人関係のストレス、いじめ、学習上の困難、インターネットを介したトラブル、精神疾患や発達障害に起因する悩みなどが不登校のきっかけとなり得ます。
子どもは悩みがあっても、それを周囲に直接訴えられないことも多いですが、不登校になる前から頭痛や腹痛を呈するといった形で、困っているサインを出すことがあります。
また、学校を休み始めると、再登校したときに周囲からどう見られるかが不安になったり、学習についていきづらくなったりすることで、不登校が長引きやすいと言われています。
日本の教育行政は、不登校などの学校で生じる問題に対応するために、1995年からスクールカウンセラーを学校に配置し、2008年度からはスクールソーシャルワーカー活用事業を開始するなどして、教育相談体制を充実させています。
教育相談は生徒指導の一部として文部科学省によって位置づけられており、子どもが学校生活によりよく適応できるように援助することを目的としています。
不登校への対応を考えるにあたっては、まずどんな問題が背景にあるのかをアセスメントする必要があります。
不登校の背景になりやすい要因として、パーソナリティの特徴や、発達障害があるなどの個人要因と、学級の状況や友人・教員との関係性、家庭環境などの環境要因の2つが挙げられます。
いじめや虐待のおそれがある場合は、特に迅速に対応を進めなくてはなりませんし、食欲不振や不眠が見られるとしたら、医療機関の受診を提案した方がよいこともあります。
また、子どもや保護者に何かを働きかける場合、スクールカウンセラーから行うのがよいのか、教員から行うのがよいのかといったことも、個別の状況に合わせて判断していきます。
なお、不登校の支援というと、以前は学校に再度通えるようになることを目指す復学支援が中心となっていました。
しかし、2016年に教育機会確保法が公布された頃からは、無理に復学を目指すのではなく、フリースクールなどの学校以外の機関も活用することで、子どもに多様な学びのあり方を提供することがよいとする考え方も広がってきています。
不登校の関連キーワード
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- 個人要因
- 環境要因
- 学校心理学
- 心理教育的援助サービス
不登校の補足ポイント
学校心理学とは、不登校を含む、学校で生じるさまざまな問題に対する心理教育的援助サービスの理論と実践を研究する分野のことです。
学校心理学に基づく子どもへの支援モデルとして、3段階の心理教育的援助サービスが提唱されています。
一次的援助サービスは、すべての子どもを対象とするものです。
子どもたちが安心して過ごせる学校環境を整えたり、想定される課題があれば予防的に支援を行えるように準備をしたりすることが含まれます。
二次的援助サービスは、学校生活に大きなストレスを感じていたり、学習意欲が低下したり、または転校したばかりで学校に馴染めないでいるといった、サポートが必要となる可能性がある一部の子どもを対象とします。
何の悩みも持たない子どもはいませんが、大きな問題が生じそうな事態や、子どもが困っているサインを早期発見し、子どもを援助していく対応が大人たちに求められます。
三次的援助サービスは、不登校やいじめなどの問題が生じていたり、発達障害があったりするなどで、特別な援助が必要な子どもが対象となります。
子どもの悩みや学校で生じたトラブルは、子ども自身の努力や、その保護者、担任となる教員の働きかけによってうまく解決できることもたくさんあります。
しかし、不登校を含めて、二次的または三次的援助サービスが必要な場合は特に、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの専門家や、養護教諭や学校管理職といった担任以外の教員もチームに加えて連携できるとよいでしょう。
そうすることにより、より円滑に子どもへの援助を進められる可能性が高まります。
不登校の生徒に対する支援機関として、教育支援センターがあります。
これは、適応指導教室とも呼ばれています。
ここでは、学習の指導とあわせて集団生活への適応や生活習慣の改善を目的とする指導が行われ、子どもの学校復帰や社会的自立を支援します。