精神保健福祉法

精神保健福祉法

精神保健福祉法の定義

精神保健福祉法とは、精神障害者の医療及び保護、日常生活及び社会生活の総合的支援、自立・社会復帰の促進、精神障害の発生の予防を目的とした法律のことで、正式名称は「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」です。

1950年に制定された精神衛生法が、1987年に精神保健法に改称され、そして1995年に福祉施策を加えて現在の名称となっています。

この法律では、精神科病院への入院形態や精神保健指定医、精神保健福祉センターの設置義務、精神障害者保健福祉手帳などについて定められています。

 
精神障害が重症化したときや、急激に症状が悪化したときは、入院治療が必要になることもあります。
入院の際に大きく関わる精神保健指定医について、まず見ていきましょう。

精神保健指定医(以下、指定医)とは、精神保健福祉法に基づいて厚生労働大臣が指定する医師のことです。
指定医になるためには、精神医療や法律に関する学識や一定以上の診療経験があり、所定の研修課程を終了していなくてはならず、またこの資格は5年毎に更新が必要となります。

指定医は、患者の意思によらない非自発的入院をさせたり、行動制限を行ったりすることができる立場にあります。

非自発的入院や行動制限は患者の人権を制限することと言うことができ、そうしたことを行える指定医の資格取得要件は、法律で厳しく定められています。

精神保健福祉法の関連キーワード

  1. 精神保健指定医
  2. 任意入院
  3. 措置入院
  4. 緊急措置入院
  5. 医療保護入院
  6. 応急入院
  7. 精神保健福祉センター
  8. 精神障害者保健福祉手帳

精神保健福祉法の補足ポイント

精神科の病院への入院形態には、任意入院、措置入院、緊急措置入院、医療保護入院、そして応急入院の5種類があります。
このうち任意入院は患者本人の意思による入院であり、他の4つの形態は患者本人の意思によらない入院となります。

精神科病院への入院は、本人の自発的な同意に基づいて行うことが望ましいとされています。
診察で入院の必要性を医師から説明され、患者本人が同意して入院するといった形態が任意入院に該当します。この場合、必ずしも指定医が診察をしなくても入院可能です。
任意入院は患者の意思によって入院しているので、患者が退院を申し出れば基本的には退院が可能です。ただし、指定医の判断により、72時間までは退院を制限することが可能です。

本人から入院の同意が得られないものの、入院させないと自傷他害のおそれがあると2名以上の指定医が判断した場合に、指定された病院に患者を入院させる形態が措置入院です。

同じく自傷他害のおそれがあり、急を要する場合には指定医1名の判断で、緊急措置入院をさせることが可能ですが、この場合の入院は72時間に限られます。

医療保護入院は、自傷他害のおそれはないものの入院の必要があり、しかし患者が任意入院を行う状態にない場合に適用されます。この場合、指定医と家族等の同意が必要です。

応急入院も、自傷他害のおそれはなく入院の必要があり、患者が任意入院を行う状態にない場合に適用されます。
医療保護入院との違いは、急を要するなどで家族の同意が得られない場合に行われる点です。応急入院も指定医の診察が必要であり、入院期間は72時間に限られます。

 
また、患者に自殺や自傷他害のおそれがある場合や、急激に精神病的な興奮状態に陥った場合などは、隔離を行うことができます。
隔離は12時間以内であれば医師なら行うことができますが、12時間を超える場合は指定医の診察が必要です。
また、隔離を開始する際には文書で告知し、隔離中は毎日医師が診察する必要があります。

 
精神保健福祉センターとは、「精神保健の向上及び精神障害者の福祉の増進を図るための機関」であり、都道府県と指定都市に設置されています。
具体的な業務には、精神保健や福祉に関する知識の普及と調査研究、精神疾患や困りごとに関する相談、医療機関などについての情報提供、精神保健福祉手帳取得時の判定、精神科デイケアの実施などがあります。

 
精神障害者保健福祉手帳は、精神保健福祉手帳とも通称されます。
この手帳については1995年の法改正で制度が設けられ、取得者は税の障害者控除、公共施設や公共交通機関利用時の割引が受けられます。
障害の重症度に応じて1級から3級で判定されますが、日常生活と社会生活に支障がない場合は交付対象とされません。

MEMO

精神保健福祉法では、精神医療審査会の設置についても定められています。
精神医療審査会は都道府県に設置されており、精神科病院に入院した障害者の人権擁護や、入院及び保護が適切に行われているかといったことを、専門的かつ独立的に審査します。

例えば、医療保護入院をしている患者に関する病院からの定期報告を調べ、入院が本当に必要なのか、その処遇が適切なのかを審査します。
また、入院中に患者やその家族から、退院や処遇改善の請求があった場合にも、精神医療審査会が審査を行います。