地域包括ケアシステム

地域包括ケアシステム

地域包括ケアシステムの定義

日本は諸外国と比べて高齢者人口の増加が進んでいます。
2025年には、いわゆる団塊の世代が全員75歳以上となり、また認知症高齢者の数も増加すると考えられることから、医療や介護の需要が現在以上に増加することが見込まれています。

こうした状況を背景に、厚生労働省は2025年を目途に、地域包括ケアシステムの構築を推進しています。

地域包括ケアシステムは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援を目的として、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるような、地域の包括的な支援・サービスを提供する体制のことです。

 
このシステムは、2011年の介護保険法改正により法的に位置づけられました。
介護保険法の改正にあたって重視されたのは、高齢者の自立支援と要介護状態の重度化防止、地域共生社会の実現、制度の持続可能性、サービスを必要とする人に必要なサービスが提供されるようにすることでした。

そして、住民のニーズに応じて、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供できるように、関連領域にまたがる多職種が適切に連携することが重視されています。

なお、ここで述べている地域とは、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏(中学校区)が単位として想定されています。

 
高齢化の進展状況には大きな地域差が生じており、画一的なシステムを全地域に適用するのは現実的ではありません。
そのため、保険者である市町村や都道府県には、地域の特性に応じたケアシステムを作り上げることが求められています。

地域包括ケアシステムの関連キーワード

  1. 介護保険法
  2. 地域包括支援センター
  3. ケアマネジメント
  4. 多職種連携
  5. ケアマネージャー
  6. フォーマルサービス
  7. インフォーマルサービス

地域包括ケアシステムの補足ポイント

地域包括ケアシステムの中核拠点として、地域住民から相談を受けたり、提供するサービスの調整を行ったりするのが地域包括支援センターです。

同センターは、2005年の介護保険法改正で規定されたもので、市町村が設置主体となっています。
原則として保健師・社会福祉士(ソーシャルワーカー)・主任介護支援専門員(ケアマネージャー)を配置し、包括的な地域支援事業を行います。

その業務は大きく4つに分かれており、1つ目は介護予防ケアマネジメント業務、2つ目は介護・保健医療・福祉に関する総合相談、支援業務、3つ目は成年後見制度の活用促進、高齢者虐待への対応などの権利擁護業務、そして4つ目は地域での暮らしを維持するための包括的・継続的なケアマネジメント支援業務です。

 
地域包括支援センターには、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員(主任ケアマネージャー)等を配置して、3職種を中心にチームを組んで住民の支援を行います。

地域包括ケアシステムにおいては、介護・保健医療・福祉領域の専門家が中心に配置されていますが、心理的な支援が必要となる場面も少なくはなく、今後は公認心理師などの心理職も含めた多職種連携が欠かせなくなっていくでしょう。

ちなみにケアマネージャーとは、住民に総合的支援を行うために、利用者の立場に立って介護サービス計画の管理を行う専門職です。
具体的な業務には、ケアプランの作成、介護給付管理、利用者とサービス事業者との調整、要介護認定などが含まれ、介護サービスをどのように、どの程度提供するのが適切かといったことを総合的に考え、調整する役割を担っています。

 
介護保険制度を利用して提供されるフォーマルサービスに対して、それ以外の支援をインフォーマルサービスと言います。

インフォーマルサービスには、家族や友人、地域の住民、ボランティアなどが提供する支援があります。
これは公的に整えられたサービスではなく、基本的には医療や福祉の専門家ではない人が行う支援になりますが、顔見知りやボランティアの人ならではの、きめ細やかな対応を行いやすいというメリットがあります。

近年は介護職の人手不足が深刻ということもあり、フォーマルサービスとインフォーマルサービスとを上手に連携する必要性が増してきています。

MEMO

地域包括ケアシステムを構築するキーワードに、「自助」「互助」「共助」「公助」という4つの「助」があります。

自助は、自分の健康を意識して介護状態にならないようにするなどの、自分自身で行うケアのことです。互助は、家族やご近所同士での相互支援などの、公的な制度に基づかない助け合いのことです。共助は、年金や介護保険などの、被保険者の相互負担によって成り立つ制度のことです。そして公助は、生活保護などの、行政による生活保障制度や社会福祉制度のことです。

住み慣れた地域で、できるだけ自立した生活を送っていくためには、まず全員が自分自身を大切にして、そして家族や近隣と協力しあい、さまざまな制度などの力を借りながら暮らしていくことが重要です。