自己実現の定義
自己実現とは、自分の中に秘めたさまざま可能性を自律的に開花させ、自分があるべき姿、ありたい姿に近づいていくことを指します。
自己実現について多くの心理学者が研究していますが、この言葉を最初に使ったのはユング,C.G.とされています。
後にユングは、個性化という言葉を自己実現と同じ意味合いで使用するようになります。
その他、代表的な研究者としてはマズロー,A.やロジャーズ,C.R.が挙げられます。
研究者により自己実現の捉え方が異なる部分はありますが、共通して人間は個性化して自分らしい状態に近づいていこうとする性質を持っているという考えや、自律性に基づいて成熟していくことが自己実現であるという考え方があります。
社会生活をする中では、自己実現ばかりを考えていると周りと軋轢が生じてしまうこともあります。 しかし、周りに合わせて自分の可能性を押しとどめ、ありたい姿からかけ離れてしまうと、日々が辛くなってしまいます。
自己実現の関連キーワード
- 個性化
- 自律性
- 成熟
自己実現の補足ポイント
自己実現をしていく過程とはどのようなことか、例を見てみましょう。
Aさんは、学校で法学を学んだ後にある会社に就職し、特に希望を出したわけではありませんが人事部に配属されました。
初めのうちは書類の整理や勤怠手続きなどが中心だったので、手順に沿って行うやや単調な仕事と感じ、学んできたことを活かせる職業に就いた方がいいのではないかと思うこともありました。
その後、異動になる先輩からの引継ぎ業務で、Aさんが異動希望者や休職者に対する面談も担当するようになりました。
社員面談の際、人事制度や法律的な話はうまく説明できるものの、相手の気持ちを汲んで接することが難しいと感じるようになります。
ある時、産業カウンセラーという資格を知り、勉強を始めてみると面白くなり、次第に会社帰りに寄り道をする時間が減り、早めに帰って勉強をする時間が増えていきました。
Aさんは、入社時は自ら配属の希望を出したわけでもなく、会社が割り当てた仕事をこなしているという様子でしたし、社員面談業務も先輩の異動に伴うものであり、自ら望んで始めたものではありませんでした。
しかし、興味のある資格を見つけて自分の可能性を拡げ、関連する資格の取得に向けて自律的に勉強する時間が増え、少しずつ自己実現に向かっていると言えそうです。
上述の通り、自己実現の定義は研究者によって若干異なります。
ユングは、自己実現とは意識と無意識とのバランスを取り、高次の全体性を目指す過程であり、人生の究極の目的であると考えました。
ロジャーズが考える自己実現は、理想とする自己像と、実際の自己像が一致して、十分に機能する人間になることです。
マズローは、自身に秘められた可能性を実現し、バランスの取れたパーソナリティになることを目指すのが自己実現であると考えました。
また、マズローの欲求の階層説においては、自己実現以外の欲求が満たされてはじめて、最高次の階層にある自己実現の欲求を満たすことができるものと考えられています。