自己概念の定義
自己概念とは、自分で自分を捉えたときのイメージ、自己像のことです。
例えば友人の誰かのことを考える場合は、主体としての自己が客体としての友人について考えることになります。
自分の主観や人から聞いた友人の評判など色々な情報をもとに、その友人イメージが形成されていきます。
このように人間についてだけではなく、出来事や何かの作品についても友人に対する例と同じく、主体が客体についてイメージ形成をしていきますが、自己概念に関しては、主体としての自己が客体としての自己についてイメージを形成していくという点で少し特殊です。
そうなると、この場合は主体と客体が明確に分けられなくなります。
このことをジェームズ, W.は自己の二重性として論じ、自己を「知る主体としての自己(I)」と「知られる客体としての自己(me)」の2つに分けました。
そして客体としての自己をさらに、物質的自己、社会的自己、精神的自己の3つに分けています。
自己概念の関連キーワード
- 主体としての自己
- 客体としての自己
- 物質的自己
- 社会的自己
- 精神的自己
自己概念の補足ポイント
物質的自己には、身体、衣服、家族、財産などが含まれます。
社会的自己は、周りの人たちが自分について抱くイメージに基づいて、自分の中で形成される自己イメージを指します。
そして精神的自己には、自分の性格、価値観など、生涯を通じてあまり大きくは変わらない気持ちのありようなどが含まれます。
自己概念は、自分で自分を観察したり、自分に関する他者からの評価を聞いたり、自分の言動に対する他者の反応を観察したりする中で少しずつ形作られます。
自己概念が持つのは、主体としての自己によって観察され、イメージを形成されるという受け身の側面だけではありません。
自分が抱く自己概念に合う側面をより意識するよう働きかけ、また自己概念に合った振舞いをするように自己に働きかけるという能動的な側面も持っています。
例えば、自分は模範的な小学校教員であるという自己概念を持っている人は、自分が子どもを大切にする気持ちを抱いていることについてはよく意識する一方、実はお酒を飲みすぎると言葉遣いが汚くなることもあるといった自己にはあまり目を向けなくなるということもあります。
また、自分のことを良い先生であると褒めてくれる言葉は聞き逃さない一方、自分が指導に失敗した時のことは忘れてしまったり、「授業に使える時間が少なかったから仕方がない」などと、自分ではないところに原因があると意味づけようとする傾向が見られることもあります。
ロジャーズ,C.R.による来談者中心療法(クライエント中心療法)でも、自己概念に焦点が当てられます。
自己概念(自分自身が抱く自己)と経験的自己(本来の自己)とが重なる部分を自己一致と呼び、この自己一致の重なる領域が小さいと、不適応をもたらすと考えられています。
だからこそ、セラピストはクライエントに、あるべき理想の自己ではなく、ありのままの自己を受容できるように働きかけるのです。