自殺対策

自殺対策

自殺対策の定義

自殺とは、自らの意思によって自ら行われた死のことであり、その当事者は自殺のために取った行為が死をもたらすことを十分に予測し、認識できているものと定義されます。

日本の自殺者数は人口の増加とともに増えてきており、1998年に特に急増して年間3万人を越えました。近年はそれよりは減少したものの、2021年度の時点で年間2万人以上となっています。

自殺の危険が明確かつ切迫している場合は、自殺しないように伝えるだけではなく、積極的に保護しなくてはなりません。

 
自殺や自殺に関連する行動は、社会的、心理的、文化的な複数のリスク因子によって生じる可能性があります。

地域や年齢差によらず、心理社会的な要因としてうつ病などの精神障害が自殺と関係しており、また過去に自殺企図がある人は、再び自殺を試みる危険性が高いと言われています。

他の危険因子としては、身近な人と死別するなどの喪失体験、いじめや家庭の問題などの苦痛な体験、失業、借金、生活苦などの仕事や経済面の問題、支援してくれる人がいない、困難を抱えていても社会制度が活用できない、またはその存在を知らないなどのソーシャルサポートの不足といったものが挙げられます。

また、絶望感、不信感などの心理状態や衝動性などのパーソナリティ傾向、抑うつを飲酒で紛らわすなどの望ましくない対処行動といった個人的特性や、致死性のある薬物を入手しやすいといった自殺手段へのアクセスの容易さなども自殺の危険因子となります。

 
自殺を防ぐ因子としては、心身の健康、安定した社会生活・家庭生活、支援してくれる人・頼ることのできる人や社会制度、組織等があること、またそれらを実際に活用していること、悩んだ時に適切な人に相談するなどの対処行動が取れること、周囲の理解、趣味や仕事などの本人の支えとなるものがあることが挙げられます。

自殺対策の関連キーワード

  1. 自殺企図
  2. 喪失体験
  3. ソーシャルサポート
  4. 自殺対策基本法
  5. 自殺総合対策大綱
  6. 自殺予防教育
  7. ストレスマネジメント
  8. 援助要請
  9. ゲートキーパー
  10. ストレスチェック

自殺対策の補足ポイント

日本では自殺の防止や自死遺族への支援の充実を図るため、2006年に自殺対策基本法が制定され、2016年に改正されました。

この改正自殺対策基本法では、自殺対策計画の策定が全都道府県、市区町村において義務化され、自殺防止、早期発見と早期介入、自殺未遂者や自殺者の親族に対する支援、それらに必要な調査研究、体制の整備などを含む9つの基本施策が挙げられています。

また、自殺対策基本法に基づく政府の自殺対策の指針として、自殺総合対策大綱が定められています。

自殺対策は、個人への支援を行うだけではなく、自殺を社会的な問題として捉え、複合的な原因を考慮しながら行う必要があります。
そのためには自殺の危険性がある人の周りにいる、家族や、学校、会社、医療機関の関係者などとの連携が重要になります。

 
自殺対策は教育や産業・労働分野などでも近年非常に重視されており、学校などでも自殺予防教育の導入が推進されています。

自殺予防教育は児童生徒だけではなく、すべての人を対象に行うことが理想です。

この教育においては、心の健康に関する基礎的知識を獲得し、ストレスマネジメント能力を高め、危機に陥ったときは周囲の人に援助要請ができるようになることを目指します。

また、他者の心の健康にも関心を持ち、身近な人が助けを求めていることに気づき、適切な支援が受けられるように促すゲートキーパーの役割を果たせるようになることも目的のつです。

 
産業・労働分野では、労働者のメンタルヘルスの不調を早期発見・介入するために、特定の事業場では事業者による労働者のストレスチェックの実施が義務づけられました。

労働者が抱える負荷を早めに把握し、必要な場合には支援を行うことが自殺対策としても役立ちます。

MEMO

厚生労働省は、自殺の危険性がある人に気づき、適切な対応を図ることができる、「命の門番」とも位置づけられるゲートキーパーの養成を掲げています。

ゲートキーパーは心理学や医療の専門家ではない一般の人も、研修を受けることでなることができ、その役割は主に、「気づき」、「傾聴」、「つなぎ」、「見守り」の4つです。

身近な人の不調や変化に気づき、声をかけて話を聴き、専門家への相談を促し、その後も寄り添って見守る存在であることが求められます。