類型論と特性論

類型論・特性論

類型論と特性論の定義

類型論特性論とは、人のパーソナリティを捉えるための2つの理論的枠組みのことです。

特性とは、個人の中で一貫して出現する行動や態度の傾向のことを言います。

例えば基本的に引っ込み思案であまり前に出たがらない傾向は「内向性」という特性が当てはまるでしょう。

その他にいろいろなことが気になる傾向としては「神経質」という特性だと言えます。

こうしたさまざまな特性が組み合わさって、人のパーソナリティを構成していると考えるのが特性論です。

特性論はイギリスやアメリカで発展し、統計的研究を取り入れ、現在のパーソナリティ研究を大きく発展させました。

 
類型とは、典型的なタイプを示す言葉であり、典型例を設定してパーソナリティを分類していくのが類型論です。

類型論はドイツの精神医学で隆盛し、クレッチマー,E.が述べた理論が有名です。

クレッチマーは体質ごとに性格を分類し、例えば筋肉質な体形をしている人は粘着気質であり、几帳面で頑固さが見られると考えました。

その他ユング,C.G.は内向・外向という類型を提示しています。

類型論と特性論の関連キーワード

  1. パーソナリティ
  2. 特性
  3. 類型
  4. 典型例
  5. 因子分析

類型論と特性論の補足ポイント

パーソナリティを典型例に当てはめて捉えることと、さまざまな要素に注目して捉えることは、私たちが普段他の人のことを考える時にも行っています。

例えば依存的パーソナリティという言葉は使わないとしても、

「Aさんはいつも誰かに頼っていて、一人では何もしない。いわゆる甘えん坊タイプだ」

と考える時、人に頼りがちなパーソナリティの類型をイメージしています。

 
「Aさんは他力本願な所があるけれど、アドバイスすると不機嫌になったりして頑固なところもある」

と考える時は、特定の類型を想定しているというよりは、Aさんの傾向のいくつかに注目しており、パーソナリティ特性をイメージしているといえるでしょう。

 
類型論はパーソナリティを全体的に把握しやすいため、20世紀にドイツを中心に発展しました。
しかし、柔軟なパーソナリティ把握には向かず、客観的な理解が難しいという難点がありました。

その一方、特性論は因子分析などの統計的解析を用いた研究が可能であり、パーソナリティの詳細を明らかにしていくことが比較的容易となりました。

パーソナリティの数量的理解がしやすいこともあり、近年のパーソナリティ研究は特性論に基づく研究が中心となっています。

MEMO

特性論の研究には、古くはオルポート, G. W.が提唱した、共通特性と個別特性からパーソナリティを捉える理論などがあります。

アイゼンク, H. J.は類型論と特性論との統合を目指し、「外向性―内向性」と「神経症的傾向」という2次元からなるパーソナリティ理論を提唱しました。
この理論に基づいてアイゼンクが作成したモーズレイ人格目録(MPI)は、現在でも使用されている心理検査です。

さまざまな特性論の研究を踏まえてマックレー, R. R.とコスタ, P. T.が提唱した、ビッグ・ファイブ(5因子)理論が、現在の特性論の研究において主流となっています。