証言の信憑性

証言の信憑性

証言の信憑性の定義

法廷で証人が述べる内容は判決に関わり、関わる人たちの人生に多大な影響を及ぼします。
それだけに、証言が信用できるか否かという点は非常に重要です。

何か事件が起こった際、その場に居合わせた人の証言を目撃者証言と言います。
この目撃者証言は、現場で事件や容疑者を目撃した人が語る内容であるため、信憑性が高いと考えられがちです。

そのため証言内容が証言者の記憶違いであったとしても、証言によって無実の人が冤罪を被ることが起こりえます。

しかし、実際には目撃者の記憶はさまざまな心理学的要因の影響で変化し得るため、目撃者証言は必ずしも信頼を置くことができないということが分かっています。

目撃者証言に影響する要因としては、凶器注目、無意識的転移、誤導情報、ストレス、年齢、照明、尋問者、目撃から証言までの時間経過、動機づけなどが挙げられます。

証言の信憑性の関連キーワード

  1. 目撃者証言
  2. 冤罪
  3. 凶器注目効果
  4. 無意識的転移
  5. 誤導情報効果

証言の信憑性の補足ポイント

目撃者証言に影響する要因のうち、主要な3つについて以下に解説します。

凶器注目効果とは、武器を持った犯人を目撃した場合、目撃者はその犯人の顔よりも武器に目が行きやすく、肝心な犯人の顔はあまり覚えていないことを言います。

事件を目撃することになってしまったら、目撃者は急激に強いストレスに曝されることになり、注意の範囲が狭まります。
そうなると、注目している部分は強く記憶に残りますが、その他の周辺の情報は見過ごされがちです。

そのため犯人がナイフではなく出刃包丁を持っていたということはよく覚えていても、犯人の顔ははっきり思い出せず、髭を生やしていたぐらいしか思い出せないといったことがあるのです。

無意識的転移とは、目撃者が事件とは別の場面で見かけた人物を犯人と誤認することです。

あるホテルの近くで生じた誘拐事件の犯人として、たまたまそのホテルに宿泊していた人物が犯人と誤認されたという事例がありました。

その事件が起きる前に、誘拐された子どもと本当の犯人が一緒に歩いている姿が、ホテルの多くの従業員に目撃されていました。

誤認された人物はホテルの宿泊客なので、どこかしらで目撃者(従業員)と顔を合わせていた可能性は高かったのです。
そしてたまたま犯人に少し似ていたがために、「誘拐された子どもと一緒に歩いていたのはその宿泊客だった」と誤認されてしまったのです。

誤導情報効果とは、目撃後に与えられた情報によって、記憶が実際とは違う方向に誘導されることです。

交通事故の映像を被験者に見せ、あるグループには「自動車が激突した時、車はどのくらいの速度で走っていたか」と尋ね、他のグループには「激突した」ではなく「ぶつかった」という言葉で同じ質問をします。

すると、「激突した」という言葉を用いたグループの方が、よりスピードを出していたと判断する傾向が見られました。

このように、目撃情報の聞き方によって、記憶の内容も歪められてしまう可能性が示唆されています。

MEMO

人は見たり聞いたりした情報をそのまま記憶しているわけではなく、また、それらの情報を思い出そうとするときも、情報を記憶したまま取り出せるわけではありません。

例えば、自分にとって馴染みのない内容についての本を読むとき、すでに持っている知識に基づいて、その情報を解釈した上で記憶します。
そして、その本を見ないで、その本の内容を話すように求められると、細部が省略されたり、自分の中でつじつまが合うように情報が付け加えられたりすることがあります。

このように、人は外界からの情報を、スキーマと呼ばれる自分なりの枠組みの中で再構成して理解し、記憶していることがわかります。
何かを思い出すにあたっても、再構成の影響を完全に排除することはできません。