来談者中心療法

来談者中心療法

来談者中心療法の定義

来談者中心療法は、ロジャーズ,C.R.により提唱された心理療法で「クライエント中心療法」とも呼ばれます。

 
人間は誰しも、潜在能力や自己成長能力としての実現化傾向を持っていると考えがベースにあります。
それらを阻害する外的圧力を取り除きさえすれば、人は自然とよい状態に成長できるというのです。

つまり、不適応や精神疾患は、クライエント自身の評価やイメージのまとまりである自己概念の中に経験的自己をうまく取り込めず、否認や抑圧、または歪曲するといった自己不一致の状態に置かれることで生じると考えます。

 
したがって、来談者中心療法の目的は、症状の消去ではなく、自己概念と経験的自己の自己一致となります。

具体的には、無条件の肯定的配慮をクライエントに寄せ、クライエントの感情的表現に対して共感的に理解し、表現された感情的内容をそのまま、もしくは要約して返すことによって伝えていきます。

これを「感情の反射」といいますが、これにより、明確には理解していなかった真の感情状態への気付きが可能となるのです。

来談者中心療法の関連キーワード

  1. ロジャーズ,C.R.
  2. 自己一致
  3. 無条件の肯定的配慮
  4. 共感的理解
  5. 感情の反射

来談者中心療法の補足ポイント

来談者中心療法における治療者の3つの基本的態度が、「無条件の肯定的配慮」「共感的理解」「自己一致」であることは有名です。

しかし、これらは来談者中心療法のみならず、様々な立場の治療やカウンセリングにおいても重要とされる概念でもあります。

 
それぞれについて、もう少し詳しく確認しておきましょう。

無条件の肯定的配慮は、無条件の肯定的配慮あるいは無条件の肯定的受容などとも呼ばれます。

クライエントの表現したものがどんな内容であろうとも、批判や評価などの一切の価値判断をせず、ありのままに受容することです。

 
共感的理解は、同情や同一視と似て非なるものです。

同情は聞き手の経験則にそって理解しようとすること、同一視は聞き手の感情と相手の感情が同じだと思い込み聞き手の立場から理解しようとすることです。

これに対し、共感的理解は、まず聞き手が「相手は自分と違う」という前提に立つことが特徴です。
その上で、自分の持つ価値感や規範意識を棚上げし、相手を理解しようとするのです。

 
自己一致は純粋性、真実性ともいいます。
自己概念に固執せず、それに反するものも含めたすべての感情や内的状態に気づいており、それをきちんと受け入れている状態のことを指します。

自己一致を目的とするこの治療において、治療者側がモデルとして機能するためにも、この態度は重要なのです。

 
心理系大学院の入試では、これら3つのキーワードが、語句説明として出題されることもありますので、それぞれ個別にまとめておくとよいでしょう。

MEMO

来談者中心療法では「非指示」というのもキーワードになります。つまり、クライエントに指示を与えないということです。

来談者中心療法を通して、クライエント自身が自らの内面を見つめ、自己成長につなげていくことが可能となりますが、すべてのクライエントに有効というわけではありません。

例えば、境界性パーソナリティ障害に対しては、このアプローチでは対応が難しいとも言われています。