プライミング効果の定義
先行の学習もしくは記憶課題が、後続の別の学習もしくは記憶課題の成績に、無意識的に影響を与えることをプライミング効果といいます。
先に見聞きする事柄がプライム、影響を受ける後続の事柄はターゲットと呼ばれます。
プライミング効果とは、促進的影響も抑制的影響も含め用いられる概念ですが、もともとは促進的に及ぼされる影響を指していました。
具体例を挙げると、例えば、連想ゲームをする前に、あらかじめ果物の話をしておくと、赤という言葉から「りんご」や「いちご」が連想されやすくなるということがあります。
また、車の話をしておくと、同じ赤という言葉から「信号」や「スポーツカー」が連想されやすくなります。
こうした効果が生じるのは、単語や概念が互いにネットワークを形成しているためだと考えられます。
指導場面では、先に手本を示したり、覚えさせたい事柄について 雑談してから教えることで、プライミング効果による 学習効率の上昇が期待できると考えられています。
プライミング効果の関連キーワード
- プライム
- ターゲット
- 促進的影響
- 直接的プライミング
- 間接的プライミング
- 活性化拡散
プライミング効果の補足ポイント
プライミング効果と呼ばれる現象には、刺激の呈示の仕方の違いにより、大きく分けて、2つのものが存在します。
直接的プライミングと間接的プライミングです。
直接的プライミングは、同一の刺激をプライムとターゲットに用いて、比較的長い時間をおいて呈示した時に、ターゲットの処理が促進されるというものです。
直接的プライミング効果を説明する理論としては、複数記憶システム説や処理説などがありますが、いずれにせよ潜在記憶に関するものとして位置づけられ、研究が進められています。
一方、間接的プライミングとは、先行刺激そのものではないけれども関連性の高い刺激を、短い時間のうちに続けてターゲットとして呈示する場合を指します。
このとき、意味的関連や音韻的関連が存在する場合の方が、無関連の場合に比べてターゲットの認知が促進されるというものです。
プライムとターゲットの間の意味的関係に基づくものは、意味的プライミングと呼ばれます。
同様に、音韻的関係に基づくものは音韻的プライミングと呼ばれます。
間接プライミング効果の説明には、記憶の意味的ネットワークモデルにおける活性化拡散という考えが主として用いられています。
プライムの処理に伴い、その概念に対応するノードが活性化され、その活性化の拡散によって、関連のある概念ノードの活性化レベルも少し上昇すると考えます。
そのため関連あるターゲットの場合、その認知のために必要とされるノードの活性化のための処理が軽減されるので、認知が促進されると考えられるのです。
提示された文字列が、単語として存在するものかどうかを判断する語彙判断課題というものがあります。
この課題では、例えば「リンゴ」は単語と判断し、「ナトフ」は単語ではないと判断します。
「リンゴ」が提示された際に、その前に先行刺激として、意味的に関連のある「ミカン」などが提示されていた場合と、意味的に関連のない「パソコン」などが提示されていた場合とを比較した研究によると、語彙判断に必要な時間は前者のほうが短いということがわかりました。
この結果は、意味的プライミング効果が働いていることを示しています。