ダークトライアド

ダークトライアド

ダークトライアドの定義

ダークトライアドとは、社会的に望ましくないとされるパーソナリティ特性のうち、マキャベリアニズム、ナルシシズム、サイコパシーという3つの特性をまとめた概念です。
ポールハス, D. L.とウィリアムズ, K. M.によって提唱されました。

3つの特性はそれぞれ異なる特徴を持っていますが、他者を自分の利益のために利用しやすいことや、共感性の乏しさなど、互いに重なり合う側面もあります。

マキャベリアニズムとは、自分の目的を達成するために他者を操作したり、欺いたりすることを比較的いとわないパーソナリティ特性です。
マキャベリアニズムの高い人は、対人関係を自分の目的を達成するための手段として捉えやすく、状況に応じて戦略的に振る舞う傾向があります。

ナルシシズムとは、自分自身を高く評価する誇大的な自己認識や、他者から賞賛されたいという欲求などを特徴とするパーソナリティ特性です。
自分には特別な能力や価値があると考え、周囲から高く評価されることを求める傾向などが見られます。

サイコパシーは、他者に対する共感性や罪悪感の乏しさ、冷淡さ、衝動性などを特徴とするパーソナリティ特性です。
サイコパシーの高い人では、自分の行動によって他者が傷ついたとしても罪悪感を抱きにくかったり、刺激を求めて危険な行動をとりやすかったりする傾向が見られます。

ダークトライアドはパーソナリティ特性を説明する概念であり、3つの特性のいずれかが高いからといって、それだけで精神疾患やパーソナリティ症と診断されるわけではありません。

また、ダークトライアドの各特性は「ある・ない」という二分法で捉えるものではなく、誰にでも程度の差がある特性として捉えることが重要です。

ダークトライアドの関連キーワード

  1. マキャベリアニズム
  2. ナルシシズム
  3. サイコパシー
  4. ダークテトラッド
  5. サディズム
  6. 反社会性パーソナリティ症

ダークトライアドの補足ポイント

ダークトライアドの3つの特性は、対人関係や社会生活においてさまざまな形で現れる可能性があります。

例えば、マキャベリアニズムの高い人は、自分の利益を得るために他者を戦略的に利用する傾向があります。
職場であれば、自分の評価を高めるために上司の前では協力的に振る舞う一方、同僚から得た情報を自分の成果であるかのように利用するといった行動が考えられます。
ただし、戦略的に物事を考えること自体がマキャベリアニズムなのではありません。
他者を操作・利用することへの抵抗感の乏しさなどを含めて捉える必要があります。

 
ナルシシズムの高い人では、自分を優れた存在として捉えたり、他者から賞賛されることを強く求めたりする傾向が見られます。
例えば、学校や職場で自分の成果を積極的にアピールし、自分が高く評価されることを期待する一方、自分よりも他者が評価されると強い不満を感じることがあります。
一方で、自信を持って人前で振る舞ったり、積極的にリーダーシップを発揮したりする側面につながる場合もあります。
そのため、自信があることや自己評価が高いことだけを理由として、ナルシシズムが高いと判断することは適切ではありません。

 
サイコパシーの高い人では、他者の苦痛に対する共感性が乏しい、罪悪感を抱きにくい、衝動的に行動するといった特徴が見られます。
例えば、自分の発言で相手が傷ついていることがわかってもあまり気にせず、同じような行動を繰り返すといったことが考えられます。
ただし、サイコパシーという言葉は日常的には犯罪者などと結びつけて使われることがありますが、サイコパシー傾向が高いことと犯罪行為を行うことは同じではありません。

ダークトライアドの3特性の違いを整理すると、マキャベリアニズムでは「目的のために他者を戦略的に利用する」、ナルシシズムでは「自分を特別な存在として捉え、他者からの賞賛を求める」、サイコパシーでは「共感性や罪悪感が乏しく、冷淡・衝動的に行動する」といった特徴に注目すると理解しやすいでしょう。

特性主な動機・欲求対人関係のスタイル行動の特徴
マキャベリアニズム目的達成・実利他者を「操作対象」とみなす長期的・計算高く戦略的
ナルシシズム賞賛獲得・自我防衛他者を「観客・評価者」とみなすアピール・自慢・過剰なプライド
サイコパシー刺激・短期的欲望他者の感情に「無関心」衝動的・冷淡・リスク追求

 
また、ダークトライアドにサディズムを加えた概念をダークテトラッドといいます。
サディズムとは、他者に苦痛を与えたり、その様子を見たりすることに喜びを感じる傾向です。
ダークトライアドの研究が進む中で、サディズムにも他の3特性とは区別できる特徴があると考えられるようになり、4つの特性をまとめてダークテトラッドとして研究することがあります。

 
臨床心理学を学ぶ上では、ダークトライアドのサイコパシーと反社会性パーソナリティ症を同一視しないことも重要です。
反社会性パーソナリティ症は、他者の権利を無視・侵害する行動様式などを特徴とする精神医学上の診断概念です。
これに対してサイコパシーは、冷淡さや共感性・罪悪感の乏しさなどのパーソナリティ特性に注目した概念です。
両者には重なる特徴がありますが、同じ概念ではありません。

 
また、カウンセリングや心理臨床の場面では、「この人は人を操ろうとしているからマキャベリアニズムが高い」「共感性が低そうだからサイコパスだ」といったように、一部の言動だけからクライエントのパーソナリティを決めつけないことが大切です。
パーソナリティ特性を理解する際には、心理検査だけではなく、面接や行動観察、生育歴、現在の対人関係などの情報を総合し、その人の特徴を多面的に捉える必要があります。

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ダークトライアドに関する説明として、最も適切なものを1つ選べ。

① 3つの精神疾患をまとめた診断カテゴリーである。
② 3つの特性は相互に関連せず、それぞれ完全に独立している。
③ いずれかの特性が認められれば、パーソナリティ症と診断される。
④ 社会的に望ましくないとされる、互いに関連する3つのパーソナリティ特性をまとめた概念である。
⑤ 主として認知能力の個人差を説明する概念である。
 

【解答】

本問題では、ダークトライアドの基本的な概念と特徴について問われています。
ダークトライアドとは、社会的に望ましくないとされるパーソナリティ特性のうち、マキャベリアニズム、ナルシシズム、サイコパシーという3つの特性をまとめた概念です。3つの特性はそれぞれ異なる特徴を持っていますが、他者を自分の利益のために利用しやすいことや、共感性の乏しさなど、互いに重なり合う側面もあります。
④は正しい記述です。ダークトライアドは、互いに関連する3つのパーソナリティ特性をまとめた概念です。また、それぞれの特性は「ある・ない」と二分して捉えるものではなく、程度の差がある特性として理解することが重要です。
①は誤りです。ダークトライアドは3つの精神疾患をまとめた診断カテゴリーではありません。あくまでもパーソナリティ特性についての概念であり、いずれかの特性が高いことだけで精神疾患と診断されるわけではありません。
②は誤りです。マキャベリアニズム、ナルシシズム、サイコパシーにはそれぞれ異なる特徴がありますが、完全に独立しているわけではありません。他者の利用や共感性の乏しさなど、互いに関連する側面があります。
③は誤りです。ダークトライアドのいずれかの特性が高いからといって、それだけでパーソナリティ症と診断されるわけではありません。パーソナリティ特性と精神医学上の診断概念を区別して理解する必要があります。
⑤は誤りです。ダークトライアドは認知能力の個人差を説明する概念ではなく、パーソナリティの個人差を捉えるための概念です。特に、マキャベリアニズム、ナルシシズム、サイコパシーの3特性を押さえておきましょう。