縦断的研究の定義
縦断的研究とは、同じ対象者を一定期間にわたって繰り返し調査し、その人の発達や変化の過程を明らかにする研究方法です。
心理学では、人の心や行動が時間の経過とともにどのように変化するのかを理解することが重要です。そのため、同じ人を長期間追跡して調査を行うことがあります。
例えば、幼児期から青年期まで同じ子どもを継続して調査し、認知能力や性格の変化を調べる研究や、高齢者を長期間観察して認知機能の変化を検討する研究などが挙げられます。
縦断的研究では、同じ人物を継続して調査するため、一人ひとりの変化を直接把握できるという特徴があります。そのため、発達や加齢による変化、生活環境の影響などを理解する上で役立ちます。
一方で、調査期間が長くなることが多く、対象者が途中で離脱してしまうことや、多くの時間や費用が必要になることなどの課題もあります。
縦断的研究の関連キーワード
- 追跡調査
- 個人内変化
- 脱落
縦断的研究の補足ポイント
縦断的研究を理解する際には、横断的研究との違いを押さえることが重要です。
横断的研究では、異なる年齢の集団を同じ時点で調査し、その違いを比較します。例えば、小学生、中学生、高校生を同時に調査して年齢による違いを検討する方法が挙げられます。
これに対して縦断的研究では、同じ子どもたちを数年間にわたって追跡調査し、どのように成長していくのかを調べます。そのため、同じ人の中で生じる変化である個人内変化を直接把握できることが大きな長所です。
また、認知能力やパーソナリティの発達、生活習慣の変化、精神疾患の経過など、時間の経過が重要となる現象の研究によく用いられています。幼少期の経験が将来の適応や対人関係にどのような影響を与えるのかを調べる際にも活用されます。
一方で、長期間の調査では対象者が転居したり、調査への協力をやめたりすることがあります。このように、調査の途中で対象者が研究から離脱することを脱落といいます。
例えば、小学1年生100人を対象として10年間の追跡調査を始めたとしても、引っ越しや進学、調査への負担などによって、最終的に調査に参加している人数が大きく減少してしまうことがあります。
もし途中で調査をやめた人に共通した特徴がある場合、最後まで参加した人だけの結果になってしまい、研究結果に偏りが生じる可能性があります。
このように縦断的研究は、人の変化や発達の過程を詳しく理解できる優れた方法ですが、多くの時間や費用が必要であり、対象者の継続的な協力を得ることが重要な研究法でもあります。
縦断的研究の欠点として、最も適切なものを1つ選べ。
① 異なる年齢集団を同一時点で比較するため、個人の変化を把握しにくい。
② 研究者が独立変数を操作するため、倫理的問題が生じやすい。
③ 長期間の追跡調査によって対象者の脱落が生じ、研究結果に偏りが生じる可能性がある。
④ 特定の個人のみを詳細に検討するため、一般化が困難である。
【解答】
③
本問題では、縦断的研究の欠点について問われています。
縦断的研究は、同一の対象者を長期間にわたって追跡し、その発達や変化の過程を検討する研究法です。個人内の変化を直接把握できることが大きな利点ですが、一方で長期間の調査を必要とするという課題があります。
③は正しい記述です。長期間の追跡調査では、対象者が転居したり、調査への参加をやめたりすることがあります。このような調査対象者の離脱を脱落といい、途中で脱落した人に共通した特徴がある場合、研究結果に偏りが生じる可能性があります。
①は横断的研究の特徴です。異なる年齢集団を同一時点で比較する方法であり、縦断的研究ではありません。
②は実験研究に関する説明です。研究者が独立変数を操作して因果関係を検討する研究法を指します。
④は事例研究の特徴を述べたものです。特定の個人や少数事例を詳細に検討する研究法であり、縦断的研究とは異なります。
このように、縦断的研究は発達や変化の過程を直接把握できる優れた研究法ですが、対象者の脱落や時間・費用の負担といった課題があることも併せて理解しておくことが重要です。


















