議題設定効果の定義
マス・メディアがニュースとしてあるテーマを連日取り上げたりすると、次第に多くの人がそのことに関心を持つようになり、大きな話題になって世論が形成されるということが起こり得ます。
情報を受けとる人たちの関心を特定の対象に向ける働きのことを、議題設定効果と呼びます。
もしマス・メディアが取り上げなければ、市井の話題にのぼることも無い内容であっても、マス・メディアが報道すると人々の耳目を集め、社会的な動きが生じることさえあります。
このように多くの人の関心を何かに向けさせられるということは、逆に言えば、人の関心を何かに向かわせないようにすることも可能ということになります。
毎日世界中でさまざまなことが起きており、個人がその膨大な情報をすべて把握することは、時間的にも情報量的にも不可能です。
そのためマス・メディアは情報を取捨選択して情報の受け手に伝える必要があります。
必然的に、マス・メディアが重要と判断した内容が大々的に取り上げられることになりますが、ある研究によると、ニュースや新聞などで大きく取り上げられた事柄が重大な出来事である、と世間の人々は認識する傾向が見られたそうです。
それはすなわち、伝達内容の恣意的な選択による情報操作が可能だとも言えます。
マス・メディアは中立的な視点から報道を行おうとしていても、その報道機関なりの方針や考え方が情報選択に反映される場合もあるでしょう。
物事を判断する時には、得た情報が中立的な観点から紹介されているか、そもそも自分自身が偏りなく情報を収集できているかといったことを、冷静に振り返ってみることが必要かもしれません。
議題設定効果の関連キーワード
- 世論形成
- 情報操作
- 予言の自己実現
議題設定効果の補足ポイント
議題設定効果が私たちの日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
例えば、コロナウイルス対策に関して、トイレットペーパーが無くなるというデマが流れ、商品が品薄になるという事態が起きました。
それだけであれば、もしかするとトイレットペーパーの品薄状況は一部の店舗や地域だけのことで済んだかもしれません。
しかしこうした状況をマス・メディアが議題設定して大きく取り上げ、品切れ状態の商品陳列棚の画面を放送したり、記事で流したりといったことを連日行うことで、人々はトイレットペーパーの品薄が重要なことだと認識するようになります。
また、この事態が重要なことだと思うと危機感を抱き始め、自分も早めに買っておかないと入手できなくなるとの思いから、必要以上に物品を購入する人が出てきます。
仮に一人が必要量の倍のトイレットペーパーを買うとすると、供給が急には追い付かなくなるのは火を見るより明らかでしょう。
すると実際に品薄の状況が生じ、トイレットペーパー不足の噂がデマではなく本当のことになってしまいます。
このように、予想や期待に従って人が行動することによって、その予想が本当のことになってしまうことを予言の自己実現と言います。
そしてマス・メディアが、品薄が拡がっており、どこに行っても物資が手に入らないという情報ばかりを取り上げると、こうした状態がさらに長引くことにもつながりかねません。
議題を設定することで特定の内容に人々の関心が向くことになり、他のことに関心が向きづらくなることで何が起きるでしょうか。
マスクの供給不足を映像付きで連日報道するばかりだと、物品が不足するという視聴者の不安を煽るばかりです。
こうした購買行動にブレーキをかけるためには、物資が不足して困る人たちのことを想像することが有効だと言われます。
マスクが入手できないことが致命的な結果につながり得る、医療機関や高齢者施設等の状況を連日報道したとしたら、もしかすると買い占め行動が少し減るのかもしれません。