エンパワーメント

エンパワーメント

エンパワーメントの定義

エンパワーメントとは、コミュニティ心理学における重要な援助技法です。

否定的評価を受けるなどして生活する力を失っているクライエントに対し、無力感を克服し、自らの問題を自ら解決し、自ら生活のコントロールをしていけるよう援助することを意味します。

つまり、個人の持つ能力を尊重して、すべての人が潜在的に持っているパワーを再び生き生きと取り戻す援助をすることで、組織や社会を活性化しようとする考え方が基本にあります。

 
例えば、社会的に弱い立場にいるために、行使すべき権利が行使できない状態になっている個人や集団に対し、彼らが自らの権利を回復し、自力でその権利を行使できるよう行われる援助活動がエンパワーメントです。

具体的には、自己主張などの社会的スキルを獲得させる
権利を行使できるような環境条件を整備する
権利行使のために必要な手段や情報を提供する

などといった方法がとられます。

エンパワーメントの関連キーワード

  1. コミュニティ心理学
  2. 自立支援
  3. QOL(生活の質)

エンパワーメントの補足ポイント

エンパワーメントのより具体的な例をイメージしておくと、理解しやすいのではないかと思います。

例えば、子供への教育を通じて、暴力から自分の身を守る能力を獲得させるCAPプログラムなどはこれに当たります。

また、高齢者や障害を持つ人と関わる際には、クライエントの自立を目標とし、本人の力で問題解決を図れるように援助する自立支援が重視されますが、これもエンパワーメントの1つと言えますね。

 
エンパワーメントはコミュニティ心理学における概念であるということについては先に述べましたが、ここでコミュニティ心理学について、少し確認しておきましょう。

臨床心理学的援助の重要な柱の1つに、臨床心理的地域支援があります。

コミュニティ心理学とは、地域精神保健、公衆衛生的発想から発展したもので、従来の密室での1対1の関わりを超え、地域社会に対して臨床心理学的援助を行うという心理学の分野です。

なお、コミュニティアプローチでは、精神的不健康を予防するという観点も重視されているのが特徴です。

 
これはエンパワーメントについても同様です。
治療が必要な、病理や不適応状態にある個人・集団のみを対象とするのではなく、QOLの向上や、よりよい発達、よりよい適応の達成を目的として行われる、開発的アプローチでもあることを覚えておきましょう。

MEMO

エンパワーメントと関連する概念として、レジリエンスとストレングスがあります。

レジリエンスとは、逆境に柔軟に対処して失敗を成長に導く心の弾力性や回復力のことであり、ストレングスとは、クライエントが本来持っている能力や潜在的な可能性のことです。

レジリエンスやストレングスは、身体的健康、柔軟性、感情をコントロールする力、楽観性、自尊感情、社交性、ソーシャルサポートの量や質といった生物・心理・社会的要因と関連しています。

こうした多元的な要因に着目して、レジリエンスやストレングスを高められるように支援してエンパワーメントを行うことが、逆境に直面している人たちにとっては大きな支援となります。