サイコロジカル・ファーストエイド

サイコロジカル・ファーストエイド

サイコロジカル・ファーストエイドの定義

サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)とは「心理的応急措置」とも呼ばれ、事故や災害など心に大きな衝撃を与える出来事を経験した人をケアするために構成された、心理的支援法の1つです。

困難な状況下で助けを必要とする人たちに、同じ人間として人道的な手助けをすることを目的に実施します。

ケガをしたときなどは、血が出ていれば止血する、やけどであれば冷やすなど、本格的な治療の前に応急処置が行われます。
適切な初期対応ができないと傷口から感染が起こるなどして、回復が長引いたり別な問題が引き起こされたりすることがあります。

 
心理的なダメージについても、初期のケアがきちんとできないと問題が長引いたり、初めは大丈夫そうに見えても後から気分が落ち込んできたりする場合などがあります。

PFAでは、支援対象者が求めていることを把握し、状況がそれ以上悪くならないように、対象者がレジリエンスを発揮して回復していける環境を整えることを重視し、応急処置を行います。

サイコロジカル・ファーストエイドの関連キーワード

  1. レジリエンス
  2. 心理的デブリーフィング
  3. 災害時ケア
  4. パンデミック

サイコロジカル・ファーストエイドの補足ポイント

災害時ケアの1つとして、心理的デブリーフィングが注目されたことがありました。

この方法は、辛い体験をした人にそれを振り返りながら心の整理をつけていくことを目的としていましたが、有効な場合もあれば、逆効果となることもあり、少なくとも専門家が十分な治療体制を整えた上で行う必要があることがわかってきています。

日々の暮らしを取り戻すことに苦労をしている状態なのに、心のケアのためにカウンセリングをしましょうと言われても、むしろ負担になってしまうことがあります。

 
PFAが目指すのは、支援対象者に負担をかけないこと、安全を確保すること、気持ちを落ち着かせること、必要なことや気がかりなことを明確にして、心理的な面だけではなく生活上の手助けも行うこと、家族、友人、地域等とのつながりを取り戻したり、結びつけたりすること、問題への具体的な対象法を伝えること、そして必要に応じて引継ぎをして支援をつないでいくことなどです。

人が安心して生活していくために必要な、普段は当たり前と思って重視されないようなことをむしろ大切にし、意識して行うと言えるでしょう。

 
PFAの基本的姿勢では、相手の気持ちを決めつけないということも重視します。支援が必要と思われる人が全員、支援がほしいと思っているわけではありません。

内心では助けてほしいと思っていても、人に頼っては申し訳ない、手助けなどいらないと思っていることもあります。
また、「大変でしたね」と言われても「私の辛さは他の人にはわからないだろうに」と感じることもあるでしょう。

PFAは医療専門家が現場の状況を把握しながら実施することが理想的ですが、非専門家以外も実践ができる支援方法と言われています。
上記のように、特別なことをするというより、相手をよく見て、同じ人間として支える姿勢を根づかせることが医療専門家の役目とも言えるでしょう。

MEMO

コロナウイルス感染症の流行による緊急事態は、実際に罹患していない人たちにとってもさまざまな負担を与えました。
感染が怖いといった心理的な負担だけではなく、お店の営業ができないなど経済的な打撃も大きく、生活や将来が脅かされる人も大勢いました。

コロナウイルス感染症に罹患した人や、その治療にあたる医療従事者、またその家族も偏見を持って見られる場合があり、周囲からの心無い言葉や態度、拒絶などにより大きなストレスを経験されたことが予想されます。

このように感染症が世界的に流行することをパンデミックといいます。大きな事故や災害と同じく、パンデミックは多くの人に強い不安や恐怖を与え、実際に感染症に罹患すれば心身ともに大きな苦痛を伴い、最悪の場合は死に至ることもあります。

PFAが基本とする、支援が必要と思われる人に負担をかけず、人々が自然と回復できる環境を整えるという考えをもとに世界中の人が助け合いを実践すれば、パンデミックという困難な状況下でも少しだけ過ごしやすくなるかもしれません。