スキーマ

スキーマ

スキーマの定義

スキーマとは認知心理学において用いられる言葉で、人間の認知過程を説明する際に用いられる概念の1つです。

ある物事に関する知識について似たような例が集まってくると、それらに共通したものを抽出して一般的知識として捉えることが可能になります。

例えば、タイヤが4つ付いていて、人が出入りする扉があり、中にはハンドルや座席があり、一部ガラス張りで中が見える鉄の塊というと、多くの人は「自動車かな」ということが頭に浮かび、少なくとも電車や馬車とは違うものだろうということが分かると思います。

こうしたことを理解できるのは、車スキーマとでも呼ぶべき、車について一般化された知識を持っているからです。

スキーマの関連キーワード

  1. 一般化された知識
  2. スクリプト
  3. 物語文法
  4. 変数
  5. 埋め込み構造

スキーマの補足ポイント

スキーマは車のような物だけではなく、動作や出来事、文章構造についても仮定することができます。

動作に関するスキーマには「投げる」、「買いものをする」などが、出来事に関するスキーマには「受験」なども挙げられるでしょう。

受験スキーマには、志望校選び、勉強、実際に試験を受けるといった典型的なスクリプトが含まれます。

文章構造のスキーマには、例えば昔話が挙げられます。
「昔々ある所に~」と始まって、「めでたしめでたし」と終わるだろうという物語文法に則ったスキーマが想定されます。

 
またスキーマの特徴として、変数を持つということと、埋め込み構造を持つということが挙げられます。

変数というのは、スキーマの構造の中で特定されていない部分のことです。
「投げる」スキーマで言えば、投げるもの、相手、方法などが変数となります。

埋め込み構造とは、スキーマの中に別のスキーマが入り込んでいるということです。

例えば、車スキーマの中には窓ガラススキーマや座席スキーマなどがあります。

普段は車を見かけても「車だ」と思うだけで窓ガラス一つ一つまで意識したりすることは少なく、むしろその方が大まかに理解をする上では便利です。

そして、必要が出てきた時だけ、窓ガラスや座席など、車に埋め込まれたスキーマについても注意を向ければよいのです。

 
こうしたスキーマの利点とは何でしょうか。
それは情報が不足している状況下でも、スキーマを参照すれば足りない情報を推論によってトップダウン処理で補うことができるという点です。

例えば外食スキーマが頭の中に入っていれば、食事をする場所での一般的な座席の取り方、注文の仕方、会計のタイミングなどが理解できているため、見知らぬお店に入ってもそれほど迷わず振る舞うことができます。

MEMO

スキーマやスクリプトと類似した概念にフレームがあります。

フレームという専門用語は、心理学だけではなく言語学や情報処理の研究においても用いられています。

認知心理学においては、フレームは世の中の出来事同士の関連性や特性に関する知識の構造を意味し、スキーマとほぼ同義として使われます。

具体的には、「レストランに行く」などの典型的な状況や、その状況下でどんなことが生じ、どのように振る舞うのが一般的なのかに関するひとまとまりの知識を指します。

人工知能研究者のミンスキー, M.が提唱したフレーム理論は、知識を構造化してわかりやすく説明するための理論です。
人が日常行っていることや考えていることなどを、フレームという単位を用いて理解・表現するフレーム理論は、人工知能の研究に大いに役立てられています。