馴化の定義
ある刺激が長時間繰り返し与えられることにより、その刺激に対して鈍感になり、反応が徐々に見られなくなっていく現象を馴化と言います。
慣れとほぼ同義と考えてよいでしょう。
馴化は、特に、報酬をもたらすわけでも有害なわけでもないような中立的な刺激に対して、特に生じやすいとされています。
反対に、呈示する刺激に変化を加えることで、刺激に敏感に反応する現象を脱馴化といいます。
馴化により、刺激の差異に敏感に反応するようになっているため、脱馴化や新たな定位反応が生じ易くなるのです。
馴化が学習とは異なる特徴は以下の通りです。
まず、強い刺激より弱い刺激の方が、複雑な刺激より単純な刺激の方が早く馴化するとされています。
強い刺激に馴化した場合は、少々の刺激には反応しない大きな馴化となります。
また、短い間隔で刺激を与えられるときの方が馴化速度は速いとされています。
馴化は与えられた刺激と似た別の刺激にも起こります。
これは刺激般化と言われるものです。
似ていれば似ているほど、馴化の程度は大きくなります。
馴化の関連キーワード
- 脱馴化
- 定位反応
- 刺激般化
- 選好注視法
- 順応・適応
馴化の補足ポイント
乳児の発達に対する研究法として有名なのが、ファンツ,R.L.の選好注視法、そして今回のテーマである馴化-脱馴化法です。
選好注視法とは、乳児の知覚や認知を研究する際の方法で、乳児が適度の刺激変化に敏感に反応し、変化のある刺激に視線や頭を向けるという「定位反応」の傾向を利用する方法です。
馴化-脱馴化法もまた、乳児の知覚や認知を研究する方法であり、乳児の好奇心の強さを利用します。
乳児は、新しい刺激を注視する習性がありますが、これが反復されると慣れが生じてほとんど反応しなくなります。
これがすでに説明した馴化です。
そこで新しい刺激を与えると反応が回復するという脱馴化を利用し、先に与えられた刺激と後に与えられた刺激との弁別を測定するのです。
さて、馴化と似た語として、順応や適応があります。
広い意味では、これらは同義で用いられる場合もありますが、一般的に生物学用語としては、適応がかなり長い時間経過の間に形態や生理が変化し固定されることをいうのに対し、順応はせいぜい数週間以内で、生理機能を環境にうまく合わせることを指します。
また、順応は生活体が環境条件に適合していく過程を指すもので、神経細胞の刺激閾の上昇や疲労によって応答率が低下する感覚的順応、社会的・文化的環境への適応といった社会的順応があります。
環境に対する生体の反応は、時間の短いほうから順に、「反応」―「順応」―「馴化」―「適応」とされていますが、実際のところ、互いに重なり合った概念でもあるため、あいまいな使われ方をされてしまう場合が多いようです。