ワーク・エンゲイジメント

ワーク・エンゲイジメント

ワーク・エンゲイジメントの定義

メンタルヘルス対策は事業者にとっての責任の1つであり、働きやすい職場づくりには欠かせません。

労働者の健康の保持増進(一次予防)、健康不全の早期発見・早期対応(二次予防)、またうつ病などを罹患した者への復職支援や再発防止(三次予防)は、これまでにも取り組まれてきている対策です。

さらに、安全配慮義務の中で、労働者の生命や身体の安全は、事業者によって確保されなければならないものとして約束されています。

ワーク・エンゲイジメントとは、労働者の心の健康を図る指針の1つであり、シャウフェリ,W.B.によって提唱された概念です。
仕事に対するポジティブで充実した心理状態を指し、ワーク・エンゲイジメントを高めることにより、労働者の健康増進と仕事のパフォーマンス上昇につながることが示唆されています。

バーンアウトの反対に位置する状態であり、「熱意」(仕事から誇りや有意味感を得ている)、「没頭」(仕事に夢中になって取り組んでいる)、「活力」(積極的に仕事に取組み、活き活きとしている)の3つが揃った状態を指します。

これらは互いに影響を及ぼし合います。
また、特定の出来事や人、行動のみに向けられる一時的なものではなく、仕事全般に対する持続的な感情でなければなりません。
 

ワーク・エンゲイジメント 図

 
ワーク・エンゲイジメントの周辺概念として、ワーカホリズム、バーンアウト、リラックスまたは職務満足感があります。
これらは「仕事への態度・認知」(どれほど楽しく働くことができているか)と「活動水準」(仕事にどれほど多くのエネルギーを注いでいるか)の程度によって分類されます。

ワーク・エンゲイジメントは、仕事に対してポジティブな感情を抱き、やりがいを見出し、活動水準も高い状態です。
一方のバーンアウトは、仕事へのエネルギーが尽き果て、意欲が低くなった状態を指します。
ときに抑うつ症状が認められることもあります。
ワーカホリズムは、一見ワーク・エンゲイジメントとの区別がつきにくいですが、仕事から離れていることへの罪悪感から強迫的に働く傾向にあり、仕事にネガティブであるにもかかわらず、働きづめてしまうことを言います。
リラックスまたは職務満足感では、活動水準はそう高くないものの、楽しく働くことができている状態にあります。

 
4つの分類の中で、バーンアウトとワーカホリズムは、ワーク、ライフともにバランスが取れた状態にあるとは言えず、メンタル面および健康面でのケアが必要になる場合があります。ワーク・エンゲイジメントとリラックス・職務満足感は、仕事に対する認知がポジティブであるため、働きがいを感じることができている状態であると言えます。

しかし、ワーク・エンゲイジメントにおいては、仕事への熱量が大きすぎるあまり、過重労働につながる恐れもあるため、健康状態や勤務状態には注意を払う必要があります。

ワーク・エンゲイジメントの関連キーワード

  1. 安全配慮義務
  2. シャウフェリ,W.B.
  3. ワーカホリズム
  4. バーンアウト
  5. 職務満足感
  6. スピルオーバー
  7. クロスオーバー

ワーク・エンゲイジメントの補足ポイント

ワーク・エンゲイジメントにおいて、スピルオーバー(流出効果)とクロスオーバー(交差効果)という現象が指摘されています。

スピルオーバーは、ライフからワーク、ワークからライフへとポジティブな感情が移ることで、互いの状態を高め合う良い影響があると言えます。
例えば、朝の目覚めがすっきりとしていたり、週末に趣味に時間を費やし、リフレッシュできたとします。
そうした余韻の中で出勤すると、職場でも気分良く過ごすことができます。

クロスオーバーは、他者の高いワーク・エンゲイジメントが周囲にも伝播する現象をいいます。同僚、上司、部下間で生じる他、共に過ごす時間の長い夫婦間では、特に互いの感情の影響を受けやすいとされています。
いずれもポジティブな感情だけでなく、ネガティブな感情も伝染することがわかっています。

そこで、近年メンタルヘルス対策を行う上で、余暇の過ごし方や生活環境といった私生活にも注意を向けることも重要であると言われているのです。

ワーク・エンゲイジメントを高めるためには、職場の仲間からのサポート、仕事量の調整や適切なフィードバックなどを含む「仕事の資源」が第一に欠かせません。
さらに、自らのストレスケアを行ったり、負担を軽減するための楽観性や自尊心、自己効力感を含む「個人の資源」も関係します。

MEMO

ワーク・エンゲイジメントは、ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度によって測定が可能ですが、日本は、他国と比較しスコアが低いとされています。
日本特有の文化として、ポジティブな感情を抑制することが挙げられ、その結果、内在する「熱意」、「没頭」、「活力」が十分に発揮されていない可能性も潜んでいることが指摘されています。