ドメスティックバイオレンス

ドメスティックバイオレンス

ドメスティックバイオレンスの定義

ドメスティックバイオレンスDVと略され、「配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力」という意味で使用されています。

デートDVなどといった用語により、幅広い年齢層に認知されやすくなり、生活の中でも耳にすることの多くなったワードといえるかもしれません。

本来DVは家庭内で起こるすべての暴力、例えば児童虐待や兄弟間暴力、高齢者虐待などを含むため、最近では、親密な二者関係間で起きる暴力として、IPV(Intimate Partner Violece)という表現もなされるようになっています。

 
暴力の形態は大きく4つに分類され、精神的な暴力、身体的な暴力、経済的な暴力、性的な暴力が挙げられます。

骨折や打撲といった身体的ダメージだけでなく、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に陥るケースもあり、そういった場合、不眠や持続するイライラ感、物音などへの過剰な反応や、暴力を受けているときのことを生々しく思い出すといった、精神的な苦痛が長期にわたって続きます。

 
この異常な関係を断ち切ることができない理由としして、ウォーカー,L.E.は、暴力のサイクル理論とセリグマン,M.E.P.による学習された無力感を応用したものを挙げています。
暴力が繰り返される中で、二者間の緊張が高まる「緊張形成期」、虐待が行われる「爆発期」、加害者が被害者に穏やかな愛情を送ったり、謝罪を行う「ハネムーン期」が、順に見られると言われています。
被害者は、抵抗してもより暴力が激しくなることを学習すると、もうその場から逃げることはできないという無力感が形成されます。

さらに、相手の暴力を受け止めることができるのは自分だけである、相手には自分しかいない、という歪んだ思い込みが生じ、依存者の世話することで自らの存在価値を高めているとも言えます。
この関係性を共依存と言い、加害者から離れることのできない大きな要因となります。

 
DVに関する主な法律として、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(配偶者暴力防止法もしくはDV防止法)があり、配偶者からの暴力を防止し、被害者の保護等を図ることが目的とされています。
被害者は女性に多いとされていますが、対象は女性に限定されておらず、また、事実婚や離婚後の相手との関係にも適応されます。

ドメスティックバイオレンスの関連キーワード

  1. デートDV
  2. PTSD
  3. 暴力のサイクル理論
  4. 共依存
  5. パワーとコントロールの車輪モデル

ドメスティックバイオレンスの補足ポイント

DVが起きる背景には、日本だけでなく世界各国に根付く男尊女卑の概念がいまだに関係していると言われています。ある研究では、夫が妻より優位な立場にあるカップル間における虐待率は約11%であったのに対し、夫と妻とが平等であるカップル間においては約3%であることが示されています。

1984年にミネソタ州のドゥルース市において、被害女性たちがDV発生の構造を車輪に見立て、パワーとコントロールの車輪モデルとして説明しました。

車輪の中心となる車軸には、男性の持つ体力や経済力、社会的地位といったパワーが置かれます。これが女性に影響を与え、支配へとつながります。
目に見える身体的暴力は、外からは見えにくい心理的暴力、たとえば子どもを取り上げるといった脅しや、「お前は何もできない」といった罵り、女性だから外で働いてはいけないという就職活動の妨害、常に居場所を知らせなければならないといった行動の制限など、多様な暴力と組み合わさることにより威力が増大します。

さらに、車輪の外側に位置する社会的要因、たとえば援助体制の不足や女性の経済的自立の困難、妻役割や母役割の押し付けなどが合わさり、車輪がよりスムーズに回転するよう仕向けられてしまうのです。

MEMO

配偶者などからの暴力を受けている被害者を発見した際には、警察か配偶者暴力相談支援センターに通報する努力をするよう規定されています。