EAP

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EAPの定義

従業員支援プログラム(または従業員援助制度)は、Employee Assistance Program の訳語で、EAPとも呼ばれます。

EAPはアメリカで生まれました。
1950年代以降のアメリカでは、アルコール依存や薬物依存の患者やメンタルの不調を抱える人々が増加し、業務に支障をきたす従業員が増加していました。
その結果、国全体で企業の生産性が低下し、経済的不況を招く一因にもなっていたのです。

そうした状況を背景に、企業や組織の生産性を向上させるため、1960年代からEAPがスタートしました。そして、日本には1980年代からEAPが紹介されるようになってきました。

 
EAPの目的は、メンタルヘルスの不調を抱える従業員を支援することと、それによって組織の生産性を向上させることです。

厚生労働省は、「セルフケア」、「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、「事業場外資源によるケア」の4つのメンタルヘルスケアが重要であるとしています。

セルフケアは、従業員が自分たち自身で行える不調の予防的対策のことであり、管理監督者も含めた全従業員にとって重要なものです。1時間デスクワークをしたらストレッチをするといった簡単に取り組めるものも含まれます。

ラインによるケアは、業務の管理監督者が行うもので、職場環境を整備したり、部下の相談に乗ったり、部下にセルフケアの方法を教えたりすることが含まれます。部下がいつもと違う様子に見えたらさり気なく声をかけるといったことが例として挙げられるでしょう。

 
セルフケアやラインによるケアでは対応しきれない場合は、産業医や保健師などの事業場内産業保健スタッフに、従業員や管理監督者をサポートしてもらうことが有益です。
このように、EAPは組織内部で行うこともできますが、近年ではアウトソーシングによる外部EAPを利用して、事業場外資源によるケアを行う組織も増えています。

EAPを導入すると、セルフケアやラインによるケアの具体的な方法を専門家に教えてもらえたり、具体的にどう支援計画を立て、進めるべきかの指針を助言してもらったりすることで、組織のメンタルヘルス対策を円滑に進めることができるようになります。

EAPの関連キーワード

  1. セルフケア
  2. ラインによるケア
  3. ストレスマネジメント
  4. 一次予防
  5. 二次予防
  6. 三次予防
  7. リワーク支援

EAPの補足ポイント

EAPの具体的なサービスとしては、労働者本人と面談して助言を与えること、人事担当者や上司にコンサルテーションを行うこと、メンタルヘルスやストレスマネジメントに関する研修を実施することなどが挙げられます。

外部EAPの利用には費用がかかりますが、組織内部では確保が難しい専門性の高い人材による支援が受けられることや、第三者の立場から中立的な支援を提供してもらえるというメリットがあります。

内部EAPの場合、相談者と支援提供者は、部署は違っても同じ組織に属していることから、内部事情の共通理解が得られやすいという利点があります。
ただし、相談内容が上司や他の人に伝わってしまうのではないかといった懸念を従業員が持つ場合もあります。

職場におけるメンタルヘルスケアは、3段階の予防が重要とされています。

一次予防はセルフケア、職場環境改善などを行うことで、メンタルの不調を未然に防止するように努めます。

二次予防は、社内相談窓口を設置したり、業務負荷の高い従業員に面談を行ったりすることで不調の早期発見と対応を行います。

三次予防としては、休職に至ってしまった従業員のリワーク支援、復帰後のフォローアップ、不調の再発予防の働きかけなどを行います。
リワーク支援は職場復帰支援とも言い、休職者やその上司、家族、そして医療にかかっている場合は主治医と連携して、本人が職場に戻って業務を再開できるように支援することです。

EAPを導入し、従業員の不調をできる限り未然に防ぎ、発生した場合は早期発見と対応を心がけ、長期的なフォローを行うことができる環境作りをすることは、従業員にとっても職場にとってもメリットがあることです。

MEMO

日本では2008年に労働契約法が施行され、労働者への安全配慮が法的に義務づけられたこともEAPが急速に普及したきっかけの1つでした。

また2015年には労働安全衛生法が改正され、一定の条件を満たす事業所にはストレスチェックの実施が義務づけられました。職場のメンタルヘルスケアに対する関心は近年非常に高まってきています。