社会的ジレンマ

社会的ジレンマ

社会的ジレンマの定義

社会的ジレンマとは、社会全体や集団の利益が、構成員である個人の利益と衝突する場合に生じる、相互に影響し合う意志決定の葛藤状態のことです。

具体的には、以下のような状況となります。

まず、ある社会や集団において、全員が協力すれば一定の利益が均等にもたらされるというのが前提としてあります。

ただ、多くの場合、協力行動よりも非協力行動をとった方が、個人としては好ましい結果を得ることができます。

だからといって全員が自分に有利な非協力行動をとると、逆に全員が協力行動をとった場合よりも好ましくない結果がもたされることになるのです。

 
具体例としては、駅前の放置自転車が挙げられます。禁止を無視して止めた方が通学に都合がよいでしょう。

しかし、全員が同じように駅前に止めていけば、交通渋滞や通行障害を招くことになり、また、撤去のために税金が増加するといった事態になるかもしれません。

社会的ジレンマの代表的なものとしては、「共有地の悲劇」、ゲーム理論における「囚人のジレンマ」などが有名です。

社会的ジレンマの関連キーワード

  1. 集団の利益
  2. 個人の利益
  3. 共有地の悲劇
  4. 囚人のジレンマ
  5. フリーライダー

社会的ジレンマの補足ポイント

社会的ジレンマの1つとして特に有名な囚人のジレンマについても例を交えて確認しておきましょう。

AとBが大きな障害事件を起こしました。
その後、喧嘩で軽い怪我を負わせたことで逮捕された2人は、傷害事件の犯人としても疑われました。

決定的な証拠がないため、どちらかの証言が欲しいと考えた警察は、別々に取調べ、自白を引き出そうとします。
そこで警察がAに伝えたのは以下の内容です。

・Bが黙秘を続ける中、Aが自首すれば、大きな傷害事件も怪我を負わせた件も見逃してやる(無罪放免)

・両方が自首すれば、大きな傷害事件の犯人として2人とも懲役5年

・Aが黙秘しているにもかかわらずBが自首した場合には、Aがすべての罪をかぶることになり懲役8年

・両方が黙秘を続ければ、軽い怪我を負わせた件のみで懲役1年

これらはBにも同様に伝えられますが、AとBは相談をすることができません。
さて、2人はどれを選択するのが賢明でしょうか。

 
囚人のジレンマをあらわす例として、核兵器開発なども挙げられます。

A国とB国が両方とも核兵器開発を止めれば平和が維持できるにもかかわらず、相手国が裏切って核兵器開発を始める恐怖に耐え切れず、結果、双方とも核兵器開発を進めてしまうといった形です。

 
また、もっと身近なところでも、近い例は見られます。

例えば、低価格競争です。
A社とB社が両方とも値下げを止めればその利益を維持できるにもかかわらず、相手企業の値下げによりシェアが奪われる恐怖に耐え切れず、双方ともに値下げ合戦をして、結果、自らの利益を圧縮してしまうことにつながるといったことが起こります。

このように囚人のジレンマは政治・経済の解析においても欠かせない概念なのです。

MEMO

ある集団内で、その集団に貢献する活動を他の人にばかりやらせて、その恩恵に預かりながらも自分はあまり協力しない人のことをフリーライダーといいます。

社会的ジレンマ状況においては、自分では協力行動を取らなくても、誰かが集団貢献をしてくれれば、他の人たちもその恩恵を得ることができます。

そのような、自分が頑張らなくても他者が集団に貢献してくれる状況や、集団活動に対する個人ごとの貢献量を明確に示すことができない状況で、フリーライダーが生まれやすいと言われます。

具体例としては、労働組合やその活動には参加しないが、賃金引き上げの恩恵は受けたいという考えをする人たちが挙げられます。