ピグマリオン効果の定義
ピグマリオン効果はローゼンタール,R.により提唱されたもので、教師期待効果とも呼ばれます。
教授-学習場面において、教師が学習者に対し、学習の効果について何かしらの期待や予期を持つとします。
すると、その期待や予期が学習者に意識的・無意識的な影響を与えて、結果として、期待や予期通りの成績になってしまうということを示しています。
ピグマリオン効果の生じる背景として、まず、教師が事前に学習者に対して何らかの情報を持つことで、そこから仮説としての学習効果に対する期待や予期を作り出します。
それによって教師は、その仮説である期待や予期が実現するよう、意図的・無意図的に学習者に働きかけるようになります。
その結果、学習者にその働きかけが意識的にも無意識的にも 影響を与えて、学習者がその働きかけに対して肯定的、積極的に反応するようになり、最終的に教師が考えていた仮説自体が達成されることとなるのです。
ピグマリオン効果の関連キーワード
- ローゼンタール,R.
- 教師期待効果
- 予言の自己実現
- 実験者効果
ピグマリオン効果の補足ポイント
ピグマリオン効果の検証として行われたのは、以下のような実験です。
1963年にローゼンタールとフォードは、学生たちにネズミを使った迷路実験をさせました。
そのネズミを渡す際に、「これはよく訓練された利巧な系統のネズミ」「これはまったくのろまなネズミ」と言って渡したところ、その2つのグループの間で実験結果に差異が見られたのです。
情報を受け取った学生たちの、それぞれのネズミの扱い方や期待度の違いが実験結果に反映されたものとローゼンタールは考えました。
そこから、これは教師と学生の間でもあり得るのではないかと考えたのです。
翌年、教育現場での実験を行います。
小学校で、ハーバード式突発性学習能力予測テストと名づけた、ごく普通の知能テストを行ないました。
学級担任には、「今後、数ヶ月の間に成績が伸びてくる児童を割り出すための検査」と説明しておきました。
しかし、実際のところ検査には何の意味もありません。
実験施行者は、検査の結果と関係なく無作為に選ばれた児童の名簿を学級担任に見せて、「この名簿に記載されている児童が、今後数ヶ月の間に成績が伸びる子どもだ」と伝えました。
すると、その後、名簿の児童の成績が確かに向上していったのです。
報告論文の主張では、成績が向上した原因として、学級担任が名簿の児童に対して、期待のこもった眼差しを向けたこと、さらに、子供達も期待されていることを意識するため、成績が向上したといったことが述べられています。
ただし、ピグマリオン効果については、さまざまな批判があるのが現状です。
再実験において、こうした効果は認められないという結果も出ています。
主観的な期待や思い込みであっても、結果的にそれが実現してしまう現象は、予言の自己実現(自己成就予言)と言われ、ピグマリオン効果もこの中に含まれます。
また、実験を行う際に、実験者の何気ない表情や仕草などが、実験参加者の行動や実験結果に影響を与えてしまう実験者効果というものもあります。
特に、その実験でどのような結果が得られると望ましいかを実験者が知っている場合は、意図しなくても、実験者の表情や仕草などに、望ましい反応のヒントが出てしまいがちです。
実験参加者はそれを読み取って、実験者の期待に沿うように振る舞う傾向があると言われています。
そうした要因を排除するために、実験や臨床試験などではダブルブラインドテストを行うことが推奨されます。