服従の定義
服従とは、権力や権威を持つ対象からの命令や指示に従うことです。
自分の意志でそうしたいと思って行動するのではないため、時に意に反した行動を強制的にとらされることになります。
権力や権威を持つ対象から命令を受けると、その人が普段なら絶対にしないような冷酷な行動もとってしまうことがあります。
例としては、戦争中に上官から敵を殺せと言われた場合、それが良いことだなどとは思っていなくても忠実に実行してしまうといったことが挙げられます。
服従の関連キーワード
- 権力・権威を持つ対象
- ミルグラム,S.の服従実験
- 状況要因
- 実験における倫理
服従の補足ポイント
権威への服従に関する有名な研究として、ミルグラム,S.の服従実験があります。
この実験では、ある問題への回答を求められたサクラが間違った回答をした時に、その罰として電気ショックを与えるように被験者は求められます(実際にはサクラに電気ショックは与えられておらず、苦しむ演技をするだけです)。
サクラが間違えるごとに一段階強い電気ショックを与えるように言われ、そしてサクラに中止を求められても電気ショックを与え続けるようにと教示されます。
この服従実験を様々な条件で行った結果、多くの被験者が自分の意志に反して、権力に従って強い電気ショックを与え続けました。
この実験結果から、人の行動は個人の意志よりも、その人が置かれた状況要因の影響を強く受けることが明らかになりました。
権威者から命じられたり、周りの人も同じように行動したりしているのを見ると、命令に従うのは良いことではないと自分で感じていたとしても、一人だけ不服従の態度をとるのは難しくなりがちです。
しかし、こうした実験において、権威に服従しなかった人もいました。
服従を抑制する要因としては、権威に服従していない他者の存在が挙げられます。
これもまた状況要因の影響を受けていると言えますが、自分以外にも権威に従わない人がいると分かると、やみ雲には権威に服従しなくなるようです。
ちなみにミルグラムの実験は、アイヒマン実験とも呼ばれます。
アイヒマンはナチス戦犯として裁判にかけられた人物ですが、彼は冷酷な人物というよりも職務に忠実な真面目な人間であったそうです。
彼も状況要因を受けて権威に服従し、残酷な行動をしてしまったのだと考察されています。
ミルグラムの研究において、実験中に実際にはサクラに電気ショックを与えなかったとはいえ、実験参加により被験者は大きな心理的苦痛を味わいました。
またこの実験は、被験者をだまして行うような側面があったことから多くの批判を受けました。
このようにミルグラムの実験はさまざまな批判を受けましたが、その反省から実験における倫理に関する議論が深まり、心理学研究法そのものも進展するきっかけとなったのです。
自分の意志に反していながらも誰かに服従して取った行動は、表面的な同意に基づくものであり、納得はしていないことがほとんどです。
権威者の命令に服従する人がおり、さらにその周囲の人も同調して誰も反対意見を言わない状況が生じたとします。
もし権威者の命令が建設的なものであれば、その命令に従う人が納得していなくても、生産的な結果につながることもあります。
しかし、権威者の命令が非建設的である場合は、誰も納得していないのに、破滅的な結果に向かってどんどん進んでしまう可能性もあるでしょう。