傾聴の定義
傾聴とは、カウンセリングの基本的な技法の1つとされるもので、相手の話すことに積極的に耳を傾ける関わり方のことです。
ただ漫然と話を聞くのではなく、しっかりと意識を向けて積極的に聴くことが傾聴であり、文字にする際は「聞く」と区別して「聴く」という字を用いるのが一般的です。
批判せずひたすら耳を傾けること、カウンセラーの考えを押し付けず相手を尊重すること、相手に歩み寄り親身になって共感すること、クライアント自らの力で治る(自己実現する)ように手助けをするための重要な技法の一つとして位置づけられます。
傾聴が大事であるという認識はカウンセリング・心理療法全般に通じますが、その重要性を強調し普及させたのは、クライエント中心療法を提唱したロジャーズ,C.R.と言えます。
クライエント中心療法では、カウンセラーは自己一致、無条件の肯定的尊重、共感的理解を備えていることが、カウンセリングで治療的な変化を起こすための必要十分条件であると考えます。
こうした条件を身につけた上で、クライエントの話に耳を傾けることで、クライエントのパーソナリティを変化させられるような治療的関係性を作りだすことができます。
傾聴の関連キーワード
- 自己実現
- クライエント中心療法
- ロジャーズ,C.R.
- 治療的変化のための必要十分条件
傾聴の補足ポイント
傾聴するということは、身動きもせずただ話を聞いていることではありません。
何かを指示するわけではなくとも、クライエントの目の前にいる生きた人間として関係を構築するための関わりをむしろ積極的に行います。
傾聴はカウンセリングのみではなく、学校や職場のコミュニケーションにも応用できるものです。
「ええ」と相槌を打ったり、「それから?」と続きを促したり、「同僚とぎくしゃくし出したのはいつから?」と質問して明確にするのも傾聴の具体的な技法です。
また、頷くだけでも適切なやり方であれば効果的です。
「つまり最近は授業に集中できないんだね」と要約をしたり、「〇〇さんにそんなこと言われて悔しかったね」と相手の気持ちを整理したり代弁したりするのも傾聴です。
そして時には「テスト直前になるといつも不安そうだよね(ぎりぎりまで勉強しないのに)」と解釈をすることもあるでしょう。
カウンセリングではあまり性急に踏み込んだ解釈をすると、クライエントは批判されたような気持になることもあります。
しかし、ラポールと言われる信頼関係が構築された中で、クライエント自身も薄々気づいているだろうと思われることを伝えてみると、クライエントの自己理解につながり、またカウンセラーがきちんと話を理解していると伝えることにもなります。