投映法

投映法

投映法の定義

パーソナリティ検査法の一種に投映法(投影法)があります。
パーソナリティ検査法は、被検者の考え方や行動の傾向、特徴を把握することを目的に実施されるものです。
臨床的には、その検査結果を支援方法の検討に役立てることが主要な目的になります。

パーソナリティ検査法には質問紙法作業検査法、そして投映法があります。

質問紙法は、主として被検者が質問項目を読んで自らの心的状態などについて回答していくものであり、被検者自身が意識できる側面についての特徴を把握しやすい検査法です。

作業検査法は、被検者に単純作業などの特定の課題に取り組んでもらい、作業態度の傾向や、事務的作業の処理能力、集中力といった側面を知ることに役立ちます。

これらに対して投映法は、他の検査法に比べて刺激が曖昧で、回答の自由度が高いことが特徴です。
そのため、被検者が自覚していない側面を把握することに役立ち、その人独自の個性的な反応を引き出すことに適しています。

ちなみに投映法は、精神分析における防衛機制の1つである投影のプロセスを用いた検査法と考えて投影法と記載されることもあります。
しかし、検査結果には無意識的な部分だけではなく意識的な部分も反映されるという理解に基づくと、投映法と表記することがより適切と考えることができます。

投映法の関連キーワード

  1. パーソナリティ検査法
  2. 質問紙法
  3. 作業検査法
  4. ロールシャッハ・テスト
  5. バウムテスト
  6. P-Fスタディ

投映法の補足ポイント

代表的な投映法の検査としては、ロールシャッハ・テスト、バウムテスト、家と樹木と人物描画法検査(HTP)、DAPテスト(グッドイナフ人物描画法)、P-Fスタディ、主題統覚検査(TAT)などがあります。

ロールシャッハ・テストはインクの模様が描かれた図版を1枚ずつ被験者に見せて、それが何に見えるかを尋ね、回答内容やその説明の仕方からパーソナリティを把握する検査です。

バウムテストは用紙に木を1本描いてもらい、どのような木を描くかを分析してパーソナリティを推測する検査です。
具体的に何の木と指定するわけではなく、どのように描くかは被検者に委ねられるため、描画に個性が反映されます。

P-Fスタディは、人がフラストレーションを抱く場面が描かれたイラストを呈示して、イラスト内の人物がどう答えると思うかを被検者に記入してもらいます。

 
このように投映法の刺激は曖昧で回答の自由度が高いため、どのように答えるとどう解釈されるのかがわかりづらく、社会的に望ましく思われる回答をするようなことは難しいものです。
そのため、投映法には被検者が意識的に回答を歪めにくいという特徴があるので、面接で被検者の話を聞いたり、質問に答えてもらったりするだけでは見えてこない側面も把握できる長所があります。

その一方、投映法の短所としては、検査結果が数量的に把握しにくいため、統計的に解析し難いことが挙げられます。
この項目が何点以上であればこうした傾向が強いといった解釈仮説の基準が設けられていないものも多いので、結果の解釈に熟練を要し、人によって解釈が変わりやすいことも短所として挙げられます。

こうした特徴があるため、投映法については検査の信頼性・妥当性という観点からの批判があります。
しかし、解釈仮説を当てはめたり、何らかのスコアを平均と比較したりするだけでは人間のパーソナリティを深く理解することは難しく、一人ひとりの個性を記述する上で投映法は重要なヒントを提供してくれる検査法だと言えます。

MEMO

ロールシャッハ・テストは解釈仮説に科学的な根拠がなく、信頼性に欠けるといった批判も見られます。
日本におけるロールシャッハ・テストの解釈法としては、片口法と包括システム(エクスナー法)が主流であり、これらをベースに精神力動論的な観点を加えて解釈する場合もあります。

エクスナー, J. E.が開発した包括システムは、大量の検査データを解析した上で独自の実施方法と解釈法を確立しています。
ロールシャッハ・テストの他の実施・解釈法と比べて特に実証研究を重んじている点が評価されています。
また、他の実施法と比べて実施時間が短いこと、検査者による解釈のブレが少ないことが特徴です。