防衛機制の定義
内的葛藤から不安が生じると、それを減じ、なんとか心理的安定を保とうとさまざまな心理的作用が用いられます。
こうした自我の働きを防衛機制と呼びます。
フロイト,S.は、心を、道徳的価値観に基づく超自我、現実に基づく自我、本能的欲求に基づくイドからなる心的装置として捉える構造論を提唱しました。
防衛機制は、イドの衝動や欲求が満たされず、自我や超自我との間に葛藤が生じた時、自信喪失や不安などによる不安定な状態となるのを避けるため、無意識的に用いられる自我の機能なのです。
代表的な防衛機制としては、「抑圧」「投影」「反動形成」「合理化」「知性化」「昇華」などが挙げられます。
防衛機制があくまで一時的に用いられ、後に本来の衝動や欲求が満たされるのであれば、適応的で健全な対処と言えます。
しかし、一件うまく適応したように生活を続けながらも、偏った防衛機制が慢性的に用いられていると、結果として不適応や精神病理を引き起こすことにつながるので、注意が必要です。
防衛機制の関連キーワード
- フロイト,S.
- フロイト,A.
- イド
- 自我
- 超自我
- 原始的防衛機制
防衛機制の補足ポイント
防衛という概念はフロイト,S.により提唱されました。
フロイト,S,によれば、ヒステリー症状に働いている機制が抑圧であり、また強迫神経症において働いている機制は置き換えであると考えたのが始まりです。
「抑圧」とは、受け入れがたい欲求・衝動を意識の外に閉め出すという形、また、「置き換え」とは特定の対象への感情を別の対象へと向けかえるといった形での自我防衛です。
ただし、自我の防衛の概念を防衛機制として整理したのは、フロイト,S.ではなく、フロイト,A.です。
ここは間違えやすいので覚えておきましょうね。
防衛機制は誰でも用いるものです。
ただ、その防衛の方法には、適応的と言えるものも、失敗と言えるものがあります。
例えば、反社会的な欲求・衝動を文化的社会的に価値のある方向に向けることを昇華といいます。
満たされなかったエネルギーを、絵画や音楽などの芸術作品に向けるなどがこれにあたりますが、これは成功した防衛機制の1つといえるでしょう。
一方、例えば、抑圧された欲求・衝動が麻痺や感覚喪失で表現される転換、身体症状に表れる身体化、問題行動として表れる行動化などは、失敗した防衛機制であり、そのまま神経症症状を示すものとされています。
さらに、対象関係論では、口唇期前期より心的表象世界は存在し、より原初的な防衛機制が発達・機能すると考えます。
クライン,Mが提唱した「分裂」や「投影性同一視」など「原始的防衛機制」と呼ばれるものについても、病的な防衛機制として押さえておくようにしましょう。
成功した防衛機制と言われる昇華を通して、自分の中にある不安や欲求不満を芸術に向けることで、優れた作品が完成することもあります。
もしかしたら、これまで傑作と言われた小説、音楽、映画、彫刻、絵画の中には、作者の昇華によって生み出されたものもあるかもしれませんね。