心理アセスメント

心理アセスメント

心理アセスメントの定義

心理アセスメントは、心理職の中核業務の1つです。
公認心理師法の第二条には、公認心理師の4つの業務が記載されており、その中の1番目に「心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること」と書かれています。

上記のように要心理支援者の心理状態を観察、分析して、要支援者にはどのような支援が必要であり、支援者側はどのような支援を提供できるのか、支援の見通しはどのように立てられるかといったことを考える過程全体のことが心理アセスメントです。

 
心理アセスメントを行うためには、要心理支援者のことをよく知る必要があります。
主訴、支援として何を求めているのか、その人のパーソナリティ、サポートしてくれる周囲の人などに関して、支援の指針となりそうな情報を集めます。
情報を集める方法としては、面接法、観察法、心理検査などがあります。

面接法を用いて要心理支援者から話を聴き、言語的に情報を集めると共に、観察法により表情、仕草、態度などから非言語的な情報も得て、主訴やその人となりなどを理解していきます。
また、心理検査を用いると、要心理支援者が言葉では語らなかったことや、本人も意識していなかったこと、話したり観察したりするだけではわからない側面について理解を深められる場合があります。

心理アセスメントは情報を集めれば完了するものではなく、その内容を検討して、どのような支援ができるのか、あるいはできないのか、継続的なカウンセリングに導入すべきか、他の専門機関を紹介するリファーを行うべきかといったことを考えるところも含まれます。

カウンセリングや支援を継続する場合は、どのように支援するかをその見通しと共に整理します。
そして、支援を受ける本人にもその内容を説明して、支援計画の実践に役立てます。

心理アセスメントの関連キーワード

  1. 面接法
  2. 観察法
  3. 心理検査
  4. リファー
  5. 診断
  6. ケース・フォーミュレーション
  7. ラポール

心理アセスメントの補足ポイント

心理アセスメントと関連が深い概念についても見ていきましょう。

心理アセスメントと診断は共通する部分も多くありますが、狭義の医学的診断は医療行為であり、医師しか行えないという点が大きな相違点です。

両者の共通点は、要心理支援者の情報を集めてその状態を判断して、その後の支援・治療方針の見通しを考えるために行うところです。

相違点としては、診断が疾患や障害などを特定して、適切な治療法を判断することを主な目的としている一方、心理アセスメントは病理的側面や機能障害、できないことだけではなく、潜在的な力やできていることにより注目して見立てることを目的としています。

心理アセスメントとケース・フォーミュレーションも、要心理支援者の情報を集め、その理解を支援に役立てるために行われるものです。

心理アセスメントはどちらかと言うと情報の収集と分析を重視するのに対して、ケース・フォーミュレーションはそれらに加えて要支援者が抱える問題についての仮説を生成・検証することを重視します。

ケース・フォーミュレーションでは、要心理支援者が抱える問題について、その問題がいつ生じて、どのように変化して、なぜ現在も続いているのかを明らかにすることを試みます。
そして、仮説に基づいて最適と思われる支援を検討・導入し、実践しながらその効果を検証し、必要に応じて当初のケース・フォーミュレーション自体を修正していきます。

もちろん、心理アセスメントに基づく見立ても、修正は適宜行われます。
心理アセスメントに基づく支援を実践する過程において、要支援者と支援者の間で信頼関係(ラポール)が構築されていることはとても重要です。

信頼関係を築いていけそうだと思ってもらえたならば、要心理支援者が自分のことや悩みについてより率直に語りやすくなり、心理アセスメントの精度も高まりやすいと言えます。
そして、良好な対人関係が築かれれば、支援開始後にその効果を感じられない事態が生じたとしても、要心理支援者がそうしたことも忌憚なく支援者に伝え、改善策を共に考えていける可能性が高まるでしょう。

このように、心理アセスメントの過程にも、心理療法と同じように対人関係の要因が大きな影響を及ぼす可能性が高いことがわかってきています。

MEMO

要心理支援者が相談機関を訪れると、まず初回のインテーク面接が行われます。

その後、適切な支援が何かを判断するために、まずは心理アセスメントのための面接が1回から複数回行われます。

こうしたアセスメント面接の結果を踏まえて、継続的な支援としてカウンセリングを開始するのか、他の機関にリファーするのかといったことを決めていきます。

心理アセスメントはアセスメント面接の期間だけ行うわけではなく、インテーク面接の時点ですでに始まっていると言えますし、カウンセリングを開始してからもアセスメントの視点は持ち続け、必要に応じてそれまでの見立てを修正しながら支援を続けることが重要です。