傍観者効果の定義
他者に対し援助すべき状況であるにもかかわらず、周囲に多くの人がいることによって、援助行動が抑制されてしまう集団心理を傍観者効果といいます。
傍観者効果の実験を行った、ダーリーとラタネによれば、その場にいるのが自分だけであれば、援助行動が行われる確率が高くなり、反対に、周囲にいる人が多ければ多いほど援助行動は抑制されるとされています。
傍観者効果が生じる原因としては、「責任の分散」「聴衆抑制」「多元的無知」などが考えられています。
責任の分散とは、自分がしなくても誰かが行動するだろう、他者と同じ行動をすることで責任や非難が分散されるだろうと判断してしまうことです。
聴衆抑制とは、行動を起こして失敗した際の、他者のネガティブな評価に対する不安から、援助行動が抑制されるというものです。
多元的無知とは、周囲の人が何もしていないのだから、援助や介入に緊急性を要しないだろうと誤って判断してしまうことです。
傍観者効果の関連キーワード
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- キティ・ジェノヴィーズ事件
傍観者効果の補足ポイント
ダーリーとラタネは、キティ・ジェノヴィーズ事件という殺人事件において、多くの人が事件に気づいていたにもかかわらず、誰も被害者を助けようとしなかったことに注目しました。
そして、それは報道されていたような都会人の冷たさが原因ではなく、「多くの人が気づいていたために誰も助けなかったのではないか」と考え、以下のような実験を行いました。
実験では、ニューヨーク大学の学生に集団討論に参加してもらい、「討論の最中に参加者の1人が発作を起こす」という緊急事態を作りました。
学生は2名・3名・6名の3つのグループに分けられ、それぞれ1人ずつ個室に通され、マイクとインターフォンを使って順番に発言、討論をするという説明を受けます。
その最中、参加者の1人が突然苦しみ出し、助けを求める声が流れるものの、発言の持ち時間が終了し、マイクが切れてしまうという事態が発生するのです。
実際には、被験者以外の参加者は存在せず、すべてがテープに録音されたものですが、被験者は自分以外にも集団討論に参加している人がいると信じている状態です。
この緊急事態に際し、被験者が、廊下にいる実験者にこれを知らせるかどうか、また、知らせた場合、かかった時間が測定されました。
実験の結果、2名のグループ、つまり、この緊急事態を目撃したのが自分しかいないと思っている場合には、迅速に報告する傾向が見られました。
しかし、6名グループのように、他にも多くの参加者がいると思っていた場合には、報告率が低く、報告した場合でも時間がかかりました。
つまり、傍観者の存在、そしてその数の多さが、緊急事態での援助行動の抑制をもたらすということが、この実験により確認されたのです。
傍観者効果が生じる原因として挙げた聴衆抑制は、「評価懸念」とも言われます。
評価懸念という用語は、もともとは実験場面において、被験者が実験者からの評価を気にして、意図的に行動を変えたりしてしまうことを指していました。
最近では、実験場面に限らず、周囲の人から自分がどう見られるかを気にする心理を指すときに用いられています。
上記の援助行動の場面などでは、誰しも評価懸念を感じることがありますが、もともとの性格的に評価懸念が強い人もいます。
そうした人々の多くは、周囲の様子に気を配れる、約束や期限を守るといった肯定的な側面を持つ一方、率先して行動するといったことは苦手としがちです。