集団極性化の定義
集団による問題解決や意思決定が必ずしもうまくいかないという事例は、社会心理学の研究において数多く報告されています。
集団で意思決定を行う際、個々人の当初の判断や行動傾向、感情などが、集団でのさまざまなやりとりを通す中で、極端な方向に強くなる現象を集団極性化と言います。
これはつまり、集団討議後になされる集団の反応の平均が、討議前に個々人によってなされた反応の平均よりも、同一の方向により極端になって現れるということです。
集団極性化には、1人で意思決定を行う時よりも、集団で行う時の方がリスクの高いものとなるリスキー・シフトと、反対に、より安全性の高い無難な意思決定になるコーシャス・シフトの2つがあります。
最初の個人決定がリスキーな方向であれば、集団決定はよりリスキーな方向にシフトし、最初の個人決定がコーシャスな方向であれば、集団決定はよりコーシャスな方向にシフトするということが、研究により示されています。
集団極性化の関連キーワード
- リスキー・シフト
- コーシャス・シフト
- 集団意思決定
- 自己カテゴリー化理論
- 集団思考
- 集団凝集性
集団極性化の補足ポイント
複数の人々が合議によって共通の決定を下す過程である集団意思決定は、当然個人の決定とは異なります。
また投票などによる集合的決定とも異なります。
成員間の合意形成のために直接的な相互作用を前提とするからです。
そのため、集団意思決定は、グループ・ダイナミクス研究の中心的な
テーマとなっており、他の社会科学との共通部分も多いのが特徴です。
さて、集団極性化が生じる理由についてですが、3つの説明がなされています。
第一の説明は、集団討議では、多数派の意見がより多く聞かれることになり、結局、当初の立場を互いに支持、補強し合うことになるため生じるというものです。
第二の説明は、他のメンバーにより好ましい自己像を提示したいがために、他者と比較してあえて人より極端で強い意見を表面するため生じるというものです。
第三の説明は、集団討議を通じて集団への自己同一視が起こり、それぞれが自らの社会的アイデンティティを維持するので、そこでの代表意見に同調するためというものです。
これは、ターナーの自己カテゴリー化理論と呼ばれるものです。
いずれにしても、集団で討議したものが、必ずしも妥当で公正な結論とは限らないことがわかるでしょう。
三人寄れば文殊の知恵という諺がありますが、意思決定を集団で行うことで、個人で行うよりもかえって不適切な判断をしてしまうことを、心理学では集団思考といいます。
これは、社会心理学者のジャニス, I. L.が、アメリカの外交政策における重大な失敗を分析する中で概念化しました。
集団思考が生じやすい集団は、集団凝集性が高く、外部からの情報が遮断されて閉鎖的であり、強力な指導者がリーダーシップを働かせているといった特徴があります。