元型の定義
元型とは、ユング,C.G.の分析心理学における集合的無意識を形成する象徴的イメージのことです。
ユングは無意識を、個体発生上の衝動や欲求、あるいは葛藤などから構成される個人的無意識と、系統発生上の衝動や欲求あるいは記憶である集合的無意識とに分類しました。
集合的無意識は、ヒトが進化していく過程で重要な影響を与えた記憶やエネルギーで構成されており、人が個性化し、全体性を確立していく中で意識の中に取り込まなければならない重要なメッセージの貯蔵庫だと考えられています。
ユングは、多くの民族や人種、あるいは文化に見られる昔話や宗教的説話や寓話などに、共通するパターンが見出されたことから、集合的無意識の中に一定のパターンのエネルギーがあるとして元型を考えました。
元型の多くは、対称的な価値や方向性を持つ、2項関係の象徴的イメージとして構成されており、代表的なものに、ペルソナ、シャドウ、アニマ、アニムスなどがあります。
元型の関連キーワード
- ユング,C.G.
- 集合的無意識
- 象徴的イメージ
- ペルソナ
- シャドウ
- アニマ
- アニムス
元型の補足ポイント
代表的な元型について、ここでは、ペルソナ、シャドウ、アニマ、アニムスについて整理しておきましょう。
ペルソナは現実の社会的相互作用場面で、社会的役割や性別役割として他者に見せている自己イメージを指します。
相手に好意的な印象を与えようとしたり、関係を円滑に進めていこうとしたりする、役割的自己の側面で、現実の世界に適応するために必要なものです。
シャドウは「影」とも呼ばれます。
ペルソナと二項関係となる相補的な元型で、否定的・消極的な自己イメージを指します。
自分自身が認めたくない、他人にも見せたくない側面ですが、シャドウは自己の全体性を構成する不可欠な要素です。
ペルソナに固執し過ぎると、シャドウの部分を意識に取り込むことが不可能となり、結果、不適応や精神疾患が生じるとされています。
真の自己確立、つまり、個性化、自己実現においては、シャドウを自己の一部として受容することが必要なのです。
アニマは男性の内なる女性性を、アニムスは女性における男性性を表わす象徴で、それぞれ、ペルソナと二項関係を持つ、相補的元型です。
シャドウと同様、アニマとアニムスを意識の中に取り込み、受容することができれば、個としての全体性の中で自分が持つ両性性を受容し精神的な成熟が可能となると共に、異性間での共感や理解が可能となります。
元型には他にも、太母、老賢者、トリックスターなどといったものがあります。
トリックスターはいたずら者や英雄として民話や神話でよく見られる存在です。
秩序の保たれた社会では問題のある存在ですが、既存の概念にとらわれない無法者でもあるので、停滞した世界においては変革をもたらす存在にもなり得るのです。