ケース・フォーミュレーション

ケース・フォーミュレーション

ケース・フォーミュレーションの定義

ケース・フォーミュレーションは事例定式化ともよばれ、クライエントが抱える問題を把握して、それを解決するためにどのように介入するとよいかを考え、そして、その介入の有効性について仮説の生成と検証を行うことです。

ケース・フォーミュレーションのプロセスにおいて情報収集と問題の特定は不可欠ですが、単に必要事項を聞き取ったり、主訴を要約したり、問題を特定したりすることが目的ではありません。

クライエント一人ひとりの特徴を考慮しながら適切な介入を考えなくてはなりません。
そのためには、生物・心理・社会モデルに基づいて多面的に情報を集め、先入観にとらわれずにクライエントを理解することが重要です。

 
クライエントのことを深く知るためには、面接で話を聴くことが大切です。
自分の状態を言語的に説明することが苦手なクライエントにおいては、表情や様子を観察するといった非言語的コミュニケーションも役立ちます。
また、紙に主訴を記入してもらったり、質問紙法や投映法などの心理検査を実施したりすることが、クライエント理解を大いに促進してくれることもあります。

その後は、収集した情報をもとにどのようなことが問題になっているかを特定し、その問題がいつ、なぜ発生したのか、どのように変化しているのか、その後も維持されているのはなぜかという点について仮説を立て、介入方針を検討します。

 
問題の理解と仮説生成にあたっては機能分析が用いられます。
介入の目標となる問題の発生・維持の経緯を、「先行条件(弁別刺激)-行動(反応)-結果(強化)」という三項随伴性の理論に基づいて明らかにする方法を機能分析といいます。
機能分析では、問題の内容、発生状況、引き金となった要因、問題行動の結果として生じることは何かを分析して、定式化します。

そして、生成した仮説に基づいて介入方針を定め、介入を実践しながらその効果を評価して、仮説検証を行います。

支援が進むうちに当初の仮説が誤っていると判明したり、仮説の修正が必要となったりすることもあります。その際は一度立てた仮説に固執することなく修正を試みて、より効果的な介入を探ることが重要です。

ケース・フォーミュレーションの関連キーワード

  1. 生物・心理・社会モデル
  2. 仮説生成
  3. 機能分析
  4. 仮説検証
  5. 個別性
  6. 協働関係

ケース・フォーミュレーションの補足ポイント

このように、ケース・フォーミュレーションは手順がある程度明確化されていますが、型に当てはめてクライエントを理解すべきではなく、クライエントのパーソナリティや長所・短所、置かれた状況、抱えている問題などの個別性を尊重しながら関わるべきです。

上記以外にも、手助けをしてくれる家族や知り合いがいるかどうかといった社会的なリソースの有無も、クライエントの個別性を理解する上で考慮したいポイントです。

セラピストは、機能分析の内容や仮説、介入方針についてクライエントに話し、十分に内容を理解できたかどうか、それについてどう思うかといったことを確認することが重要です。

心理療法で何を行うのか、なぜそれが必要だとセラピストが考えているのかをクライエントに丁寧に説明することが大切です。
これは心理教育の側面も持っており、自身が抱える問題や、解決のために何が必要なのかをクライエントが客観的に理解すること、そしてクライエントの心理療法への動機づけを高めることにつながります。

ケース・フォーミュレーションについて話し合った結果、心理療法を実際に始めるのであれば、定式化した内容についてクライエントが納得した上で同意すること、つまり、インフォームド・コンセントを得るプロセスが欠かせません。

そして、介入を実践してみて効果が感じられたかどうかといったことを、支援者とクライエントとの間で率直に話し合うことも大切です。
お互いを信頼して協働関係を築いてこそ介入の効果が高まり、クライエント自身が自らの問題に率直に向き合うことにもつながるのです。

MEMO

心理アセスメントにおいてもクライエントについての情報を集めて見立てを行いますが、ケース・フォーミュレーションは、クライエントが抱える問題について機能分析を行うことや、仮説の生成・検証を重視するというところが特徴的です。

また、三項随伴性の理論を取り入れている点などから、認知行動療法と関連づけて説明されることが多いですが、ケース・フォーミュレーションはどのような心理療法にも適用できるものです。