ヒューリスティック

ヒューリスティック

ヒューリスティックの定義

ヒューリスティックとは、人が問題解決や意思決定を行う際に用いる簡便で直感的な思考方略のことです。
限られた時間や情報の中で迅速に判断するために、経験や印象に基づいた直感的判断が行われます。
この方法は効率的で日常生活に適応的ですが、その分、判断の偏りである認知バイアスが生じやすいという特徴があります。

一方、アルゴリズムは問題を解決するための明確で体系化された手順であり、決められたステップを順に実行することで、原理的には正しい答えに到達できる方法です。

両者の違いについて、「料理」に例えて考えてみましょう。
ヒューリスティックは「これまでの経験から目分量で味付けする料理」であり、素早く作れる反面、味にばらつきが出る可能性があります。

これに対してアルゴリズムは「レシピ通りに計量して作る料理」であり、時間はかかりますが安定した結果が得られます。

このように、ヒューリスティックは効率性、アルゴリズムは正確性を重視した思考法として対比されます。

ヒューリスティックの関連キーワード

  1. 直感的判断
  2. 認知バイアス
  3. アルゴリズム
  4. 代表性ヒューリスティック
  5. 利用可能性ヒューリスティック
  6. 係留と調整ヒューリスティック

ヒューリスティックの補足ポイント

ヒューリスティックにはいくつか代表的な種類があり、それぞれ「どのような手がかりに頼って判断するのか」が異なります。

代表例として、利用可能性ヒューリスティック、代表性ヒューリスティック、係留と調整ヒューリスティックがよく知られています。
これらはどれも、複雑な状況で素早く判断するためには役立ちますが、同時に認知バイアスの原因にもなりやすいものです。

 
代表性ヒューリスティックとは、ある対象が、私たちが持っている「典型的なイメージ」にどれくらい似ているかによって、そのカテゴリーに属する確率や頻度を判断することです。

本来であれば、ある属性に当てはまる確率を考えるには、全体の割合や統計的な情報も踏まえる必要があります。
しかし実際には、人は「いかにもそれっぽい」という印象に強く引っぱられます。

例えば、静かで本好き、論理的で細かい作業が得意そうな人を見て、「この人は図書館司書か研究者だろう」と考える場合があります。
けれども、その人の職業を考えるには、社会の中でどの職業の人数が多いのかという基礎的な確率も本来は重要です。それでも私たちは、典型イメージとの一致を優先して判断しやすいのです。

 
利用可能性ヒューリスティックとは、ある出来事の起こりやすさや重要性を判断するときに、「どれだけ思い出しやすいか」「どれだけ頭に浮かびやすいか」を手がかりにすることです。
つまり、客観的な頻度や統計ではなく、記憶の中でアクセスしやすい情報が判断基準になってしまうのです。

例えば、飛行機事故のニュースは大きく報道されやすいため印象に残りやすく、「飛行機はとても危険だ」と感じることがあります。
しかし、実際の事故件数だけを見れば、もっと頻度の高い事故もあります。このように、思い出しやすい情報ほど実際より多い、あるいは重要だと見積もってしまうのがこのヒューリスティックです。

 
係留と調整ヒューリスティックとは、最初に与えられた数値や情報を基準点として、その後の判断をそこから少しだけ修正して行う傾向のことです。
この最初の基準点を「アンカー」といいます。

人は何かを判断するとき、まったくのゼロから考えるよりも、まず提示された値や印象に引っぱられ、その基準から十分に離れられないことがあります。

店で「通常価格2万円が、今日は1万2000円です」と示されると、その商品自体の適正価格をよく知らなくても「かなり安い」と感じやすくなります。
このとき、最初に見た2万円がアンカーとして働いています。

 
このように、各ヒューリスティックは、直感的判断を支える便利な仕組みである一方で、現実をそのまま正確に反映するとは限りません。
だからこそ、正確さが求められる場面ではアルゴリズム的な手続きが重要になります。

公認心理師試験対策 確認問題

公正なサイコロを3つ同時に振ったとき、「1・1・1」と出る場合よりも「3・6・5」と出る場合の方が起こりやすいと判断する傾向がある。この判断に関与している思考過程として最も適切なものを1つ選べ。

① 利用可能性ヒューリスティック
② 代表性ヒューリスティック
③ 係留と調整ヒューリスティック
④ 再認ヒューリスティック
 

【解答】

本問題では、公正なサイコロを3つ同時に振ったときに「1・1・1」と出る場合よりも「3・6・5」と出る場合の方が起こりやすいと判断してしまう理由が問われています。
まず前提として、公正なサイコロを3つ振った場合、それぞれの目の出方の組み合わせはすべて同じ確率で生じます。したがって、「1・1・1」と「3・6・5」はいずれも同じ確率であり、どちらが起こりやすいという差はありません。
このように、人は実際の確率ではなく、「どれだけ典型的でそれらしいか」という印象に基づいて判断を行うことがあります。この思考過程が代表性ヒューリスティックです。したがって、答えは②となります。