KJ法の定義
KJ法とは、収集した情報をラベルに書き出し、内容の近さに基づいてグループにまとめ、それらの関係を図や文章で表すことによって、問題の全体像を捉え、新たな発想や仮説を生み出す方法です。文化人類学者の川喜田二郎が考案したもので、「KJ」という名称は氏名のイニシャルに由来します。
例えば、大学生活で困っていることについて学生にインタビューをすると、「授業の内容が難しい」「先生に質問しづらい」「誰に相談すればよいかわからない」など、さまざまな発言が得られます。こうした発言を1つずつ読み取り、内容の近いものをまとめていくと、学生がどのような困難を抱えているのかが見えてきます。
さらに、それぞれのまとまりの関係を検討することで、個々の発言を読んでいるだけでは気づきにくかった、問題のつながりを捉えることができます。
KJ法は、もともとフィールドワークで得られた情報をまとめるために生み出されました。心理学では、インタビューや自由記述などを扱う質的研究の分析方法の1つとして用いられ、データから新たな見方や説明を導く仮説生成に役立ちます。また、教育、医療、福祉などの研究に加え、職場の課題の整理や問題解決にも活用されています。
KJ法の関連キーワード
- 川喜田二郎
- フィールドワーク
- 質的研究
- 仮説生成
KJ法の補足ポイント
KJ法について理解する上で重要なのが、あらかじめ決めた分類枠に情報を当てはめるのではなく、個々のデータの意味に即してまとめていくという点です。
例えば、学生の発言を最初から「学業」「人間関係」といった項目に振り分けると、分類しやすい一方で、異なる話題に共通する経験を見落とすことがあります。「授業でわからないところがあっても聞けない」「進路について悩んでいても相談できない」という発言は、話題は異なりますが、どちらも周囲に助けを求めにくい経験を表しているかもしれません。
このように、KJ法では、同じ言葉が使われているかどうかだけで判断せず、それぞれの発言が何を伝えているのかを読み取ります。ただし、分析者が想像した意味を付け加えるのではなく、元の発言やその文脈を確かめながら検討することが大切です。
基本的な手続きは、ラベルづくり、グループ編成、図解化、叙述化の4段階に分けられます。
まず、ラベルづくりでは、インタビューの発言や観察記録などから、1つの内容を表すまとまりを取り出し、ラベルに記します。一枚のラベルに複数の話題を詰め込まず、そのラベルを読めば内容がわかるようにします。このとき、短くまとめることを優先しすぎて、元の発言の意味を変えてしまわないように注意が必要です。
次に、グループ編成では、ラベルを広げて読み、内容の近いものを少数ずつ集めます。そして、そのグループ全体が伝えている意味を短い文章で表し、「表札」とします。
例えば、「初歩的なことを聞くと恥ずかしい」「忙しそうな先生に質問すると迷惑だと思う」という発言が集まった場合、「相手にどう思われるかが気になり、質問をためらう」という表札が考えられます。単に「質問の問題」と名づけるよりも、学生が何に困っているのかが具体的に伝わります。
必要に応じて、表札同士についても同じように検討し、より大きなまとまりを作っていきます。また、ほかのラベルと内容が近くないものは、無理にグループに入れず、そのまま残して扱います。
続く図解化では、グループ同士の関係を考えながら配置し、囲みや線、関係を説明する言葉などを用いて図に表します。例えば、「質問をためらうこと」と「わからない内容が増えていくこと」がどのようにつながっているのかを、元のデータを確認しながら検討します。
最後に、叙述化では、図に表した内容を文章や口頭で説明します。それぞれのまとまりがどのように関係しているのかを言葉にすることで、説明が曖昧な部分を確かめ、分析から得られた理解をまとめていきます。
このように、KJ法では、情報をグループに分けるだけでなく、まとまり同士の関係を捉え、図や文章で説明することが重要です。
また、KJ法は、あらかじめ立てた仮説を検証することよりも、データから新たな仮説を生み出すことに適しています。先ほどの例であれば、「学習上の困難には、質問や相談のしにくさが関係しているのではないか」という仮説が得られるかもしれません。ただし、図に関係を示しただけで因果関係が確かめられたことにはならず、得られた仮説については、必要に応じて追加の調査などで検討していきます。
KJ法に関する説明として、最も適切なものを1つ選べ。
① 仮説が正しいかどうかを、数量データの統計的分析によって検証する方法である。
② あらかじめ設定した分類枠に、すべてのラベルを振り分ける。
③ ほかのラベルとグループを作れないラベルは、分析から除外する。
④ ラベルの内容に基づいてグループを編成し、相互の関係を図や文章で表す。
⑤ グループ間の関係を図に示すことで、因果関係を実証する。
【解答】
④
④は正しい記述です。KJ法では、収集した情報をラベルに書き出し、内容の近さに基づいてグループを編成します。そのうえで、グループ間の関係を図や文章で表し、問題の全体像の理解や新たな仮説の生成につなげます。
①は誤りです。これは統計的分析によって仮説を検証する方法の説明です。KJ法は、個々のデータの意味を読み取り、新たな仮説を生み出すことに適した方法です。
②は誤りです。KJ法では、既存の分類枠に情報を当てはめるのではなく、ラベルの内容を読み取りながらグループを作ります。
③は誤りです。ほかのラベルとまとまらないラベルも、独自の内容を持つ情報として扱います。無理にグループに入れたり、まとまらないことを理由に除外したりするものではありません。
⑤は誤りです。図解は、データから読み取った関係を表すものであり、それだけで因果関係が実証されたことにはなりません。



















