錯視

錯視

錯視の定義

錯視とは、視覚に関する錯覚のことを言い、止まっているものが動いて見えるなど、実在する対象を誤って知覚してしまう現象を指します。

有名な錯視としては、同じ長さの線が違う長さに見えるミュラー・リヤー錯視、直線が傾いて見えるフレーザー錯視、同じ色の明るさが異なって見えるホワイト効果などが挙げられます。

特にミュラー・リヤー錯視は大学の心理学部の実験でよく用いられます。
下図において、内向きの矢羽のついた直線と外向きの矢羽の直線のついた直線では、内向きの矢羽のついた直線の方が長く見えるはずです。
しかし、実際には2つの直線は同じ長さなのです。

ミュラー・リヤー錯視

 
錯覚の中には、このような目の錯覚以外にも思い違いなども含まれますが、錯視は知覚レベルでの錯覚、思い違いは認知レベルでの錯覚に分類されます。

蜃気楼も錯覚に含まれますが、これは物理的な錯覚であり、心理学が扱っている錯覚とは異なる性質のものです。

なお、錯覚と似たものに幻覚がありますが、幻覚は対象が実在していないという点で、錯覚と大きく異なります。

錯視の関連キーワード

  1. 錯覚
  2. ミュラー・リヤー錯視
  3. フレーザー錯視
  4. ホワイト効果

錯視の補足ポイント

錯視が起こるメカニズムはまだ完全に明らかにされているわけではないですが、視覚情報を処理する脳の働きが重要なキーポイントになっているようです。

私たちは視覚情報を目から取り入れますが、その情報は脳に伝わって処理されます。
その情報処理にかかる時間は、情報の種類ごとに異なるため、同時に何種類かの情報が入ってくると結果的に錯視が生じるという解釈もあります。

心理学専攻の学部学科では実験心理学を必修としている所も多く、ミュラー・リヤー錯視を使った実験がよく用いられます。
直線に矢羽根のついた図形を被験者に見せて錯視量を測定する実験で、矢羽根の長さや角度の異なる何パターンかの刺激を使います。

こうした実験を行うと、矢羽根が短い時と長い時とで錯視量が変わってくるなど、実在する対象と知覚した対象との間にギャップが生じていることが見て取れます。

錯視を研究することによって、実在するものと、私たちが知覚するものとの間にどのような違いが生じるのか、どうしてそのような違いが起こるのかを探ることができます。

 
こうした知覚研究の積み重ねは、私たちの視知覚のメカニズムを明らかにすることにつながり、そこから交通事故防止などにも応用されています。

運転中は立体視がしにくいと言われており、錯視によって運転間隔を見誤って事故につながるというケースも多々あります。
そのように視覚的に運転しづらくなってしまっている道路を発見し、改善策を見出すために知覚研究が応用されることもあるのです。

MEMO

二重線で描かれた円の内側の円は、内側の円単体で見たときと比べて、大きく見えるデルブッフ錯視という現象があります。化粧をするときに目の周りにアイラインを描くと、デルブッフ錯視により目を大きく見せることができます。自分では錯視を利用していると気づいていなくても、無意識に錯視を日常生活に取り入れている人も意外と多いかもしれません。