集団療法

集団療法

集団療法の定義

集団療法とは、複数人の小集団を対象とし、治療者とメンバー、メンバーとメンバーの間の相互作用の中で、各々が抱える問題へのアプローチを行う治療法の総称です。

集団療法の人数、対象者の年齢、抱えている疾患や問題の種類、治療の期間、治療プログラムの内容などは非常に多岐に渡っており、集団療法と称するための厳密な規定はありません。
集団療法は、実施される場所の設定や個々の成員によって多種多様の特徴が生まれるため、その理論や技法は非常に複雑化しやすいと言われています。

 
また、その呼称も「集団心理療法」、「集団精神療法」、「グループ・カウンセリング」など多くの呼称が用いられ、これらの名称が混同されて使われていることも多々あります。

大まかな意味としては、まず集団を対象とする治療活動の総称として集団療法があり、その中でも心理学的な機序を基盤として行う療法を集団心理療法と呼びます。
そして集団心理療法の中でも、言語を主に用い、心理的介入によって治療を目指すものを狭義の集団精神療法としています。
グループ・カウンセリングは、狭義にはロジャーズ, C.が創始したエンカウンター・グループから発展したものですが、日本においては集団心理療法とあまり区別されず用いられることもあります。
実情としては、より健康度の高い対象者を中心に行う集団療法のことを、グループ・カウンセリングと称することが多いようです。

 
集団療法の治療的要因は、その構成要素の複雑さゆえに一概に言えるものではありませんが、アメリカの精神科医であり集団精神療法の基礎を築いた1人でもあるヤーロム, I.D.は、その経験から以下のような要因を挙げています。
それは、集団の中に受け入れられる体験、他者の気持ちや行動を体験することで「自分だけではない」と安心する普遍化感情のカタルシス、模倣を通じた学習、他者を助けることで生じる自尊心の回復、などです。
こうした要因は、狭義の集団精神療法だけではなく、多くの集団療法に共通のものでもあるでしょう。

 
なお、集団療法における治療アプローチの方法も無数に存在しますが、個人精神療法のように個人の過去の対人関係に焦点を当てるよりも、「今ここ(here and now)」での体験、つまり集団のその場その場で起こっている体験を重視する点は、多くの集団療法に当てはまることであると考えられます。

集団療法の関連キーワード

  1. 相互作用
  2. エンカウンター・グループ
  3. 普遍化
  4. 感情のカタルシス
  5. 「今ここ(here and now)」での体験

集団療法の補足ポイント

ここまでは、集団療法の概要について述べましたが、多種多様な集団療法の中でも代表的な技法をここで紹介します。

まず有名なものとして、ロジャーズ, C.R.のエンカウンター・グループが挙げられます。
アメリカ全土において1960年代から70年代にかけて自己成長を目指す集中的グループが急速に広まっていきましたが、エンカウンター・グループは狭義にはロジャーズのベーシック・エンカウンターグループを指し、広義にはこうしたグループワークの急速な広がりそのものとしての「人間性回復運動」と同義に使われることもあります。

また、この動向の中でレヴィン, K.のTグループや、モレノ, J.L.の心理劇(サイコドラマ)、バーン, E.の交流分析ゲシュタルト療法などの集団療法が発展しています。

 
必ずしも心理臨床の文脈のみに回収されない領域でも、集団療法は多く取り入れられています。
例えば、入院病棟における各種の作業療法、他職種によって運営される精神科デイケアでの活動、AA(Alcoholic Anonymous)と呼ばれるアルコール依存患者のための自助グループ、その他ギャンブルや薬物などの各種の依存症の自助グループなどが挙げられます。

集団療法は、こうした多種多様な形態をもち、その適応範囲も非常に幅広いものと言えます。
その一方で、個人を対象とした治療に比して治療の発展を左右する要素が非常に多く、複雑で難しい方法であることも、実施の際には意識しておくことが大切です。

MEMO

補足ポイントでは、集団療法の技法について主なものを列挙するのみとなりましたので、それぞれの技法の詳細については別の項をご参照下さい。また、ここに挙げたものが集団療法のすべてではないということも理解しておきましょう。