音楽療法

音楽療法

音楽療法の定義

音楽療法とは、音楽を用いて心身を落ち着かせたり、疾患の緩和に役立てたりする治療法のことです。

19世紀後半に、ヘルムホルツ,H.L.F.やシュトゥンプ,C.の研究から、科学的な音楽心理学が成立しました。

音楽心理学では、音楽の知覚や音楽に関する生理的・医学的測定、作曲・演奏、音楽教育などが研究対象となり、その一環として音楽療法についての研究も行われていました。

 
音楽療法は、音楽を聴くことによるカタルシス効果や、脳波や自律神経に働きかける作用によって、治療的な効果が得られると考えられています。

心身のリラクセーションや、精神疾患に対する心理療法、発達障害に対する情緒面への働きかけ、身体疾患治療におけるリハビリテーション促進、入所施設利用者や入院患者におけるデイケアなどで用いられています。

音楽療法の関連キーワード

  1. 音楽心理学
  2. 自律神経
  3. リラクセーション
  4. 非言語的コミュニケーション
  5. 自閉症

音楽療法の補足ポイント

音楽療法とは、「音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身の障害の軽減回復、機能の維持改善、生活の質の向上、問題となる行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること」と音楽療法学会で定義されています。

 
音楽は、言葉が通じなくても、その音楽が呼び起こす感情を共有することができ、音楽は言葉よりも情緒的な交流が容易です。

多くの心理療法では言語を用いたコミュニケーションが基本となりますが、音楽を通して非言語的に働きかける音楽療法は、自閉症者など言語的交流が困難とされる人々とも交流しやすいという利点があります。

 
音楽を聴くことは心身にさまざまな影響を及ぼします。
一般的に、テンポの速い音楽を聴くと気分が高揚して呼吸が早まり、緩やかな音楽を聴くと気持ちも呼吸も穏やかになります。

歯科医院などではゆったりとした音楽が流れていることが多いですが、これは不安の軽減や治療中の雑音緩和、治療の痛みから気を紛らわせるなどの効果があります。

 
音楽療法を行うにあたっては、その他の心理療法と同様にアセスメントを行い、対象者の性格・疾患の特徴や音楽の好みを把握しておくことが重要です。

そして心理的な落ち着きを獲得する、記憶力を高める、コミュニケーション能力を向上させるなどの目標設定を行います。

実際のプログラムは、集団で打楽器を使ってリズムをとる、CDで歌謡曲を聴いてその想い出を語ってもらうなど対象者に応じて変わります。

 
プログラム中の様子を観察・記録し、プログラム前後で質問紙を用いるなどして評価を行います。

参加スタッフは、医師や看護師、作業療法士、臨床心理士、言語聴覚士、音楽療法士などさまざまな職種が関わることが多いですが、各職種ごとに視点も異なるため、スタッフ同士でカンファレンスを行い、評価、治療計画を検討していくことが治療上大切です。

MEMO

現代の西洋医学的な治療法以外の、一般的に通常医療とは見なされていない、さまざまな治療法や健康法のことを、補完代替医療と言います。

補完代替医療には、鍼灸、漢方薬治療、瞑想法、健康食品、アロマテラピーなどに加えて、音楽療法も含まれます。

音楽療法は、手術や投薬が適用できない、またはそれだけでは対応ができないような心理的問題を緩和する可能性があり、西洋医学的な治療を補完する技法としても有益だと考えられています。

音楽療法が、認知症患者の行動・心理症状や、がん患者の不安・抑うつ感を和らげることに役立ったという報告も見られます。