投影の定義
投影とは、精神分析の概念である防衛機制の1つです。
感情などの、自分が心の内に抱いている心理的な要素を、自分ではなく他の人が持っていると捉えようとする心の働きを指します。
ある人のことが好ましいと感じ、相手も自分によい感情を持っていると思ったとします。
それが実際お互いに好感を抱いていることもあれば、実は単に投影をしているだけだったということもあります。
このような肯定的な感情が他者に投げ込まれることは、不快な感情などに対する防衛機制とは言えず、そのことが大きな問題になることはそれほどないでしょう。
しかし、否定的な感情が投影されるとそうではないかもしれません。
自分が相手に否定的な感情を抱いた場合、人はその感情のやり場に困ることが多いものです。
自分にとって好ましくないと感じる考えや気持ち、情動など、そうしたものが自分の中にあると思うと、多くの人は落ち着かず、あまりいい気分にはなりません。
そうした時、その不快感をなんとか和らげようとして投影などの防衛機制が用いられることがあります。
投影が生じると、自分の心の中にある不快感は他者の中に投げこまれます。
私があの人を嫌いなのではなく、あの人が私を嫌いだと認知することで心の負担を和らげようと試みるのです。
投影の関連キーワード
- 精神分析
- 防衛機制
- 自我心理学
- 対象関係論
投影の補足ポイント
投影を日常生活に当てはめて考えてみましょう。
例えばAさんは職場の同僚のBさんについて、大した理由があるわけではないけれど何となく嫌だなと思っています。
Aさんとしては、さほどの理由もないのに自分が他人に対して嫌いという感情を持つことが、あまり良くないことだと感じています。
次第に、自分がBさんのことを嫌いなのは、むしろBさんが私のことを嫌っているからだと思うようになっていきました。
この場合、「理由もなく人のことを嫌うような私」でいるのは気分が悪いので、自分がBさんのことを嫌いなのではなく、Bさんが私(Aさん)のことを嫌っていると無意識に思うようにしたと言えます。
こうした心の働きが投影です。
このように投影を行うと、なぜかむやみに私のことを嫌う不思議な人がいるというストレスは生じますが、主観的には自分はむやみに人を嫌うような人間ではなくなり、そちらの方が心理的な負担が軽くなると考えられます。
防衛機制はフロイト,S.とフロイト,A.の親子によって提唱、概念整理がなされました。
投影を防衛機制と捉えるのは、フロイト,A.らの自我心理学派の考え方です。
一方で、クライン,M.らの対象関係論は、投影を対象関係や超自我を発達させるものとして、異なる見解を提示しました。