サリヴァン,H.S.

サリヴァン,H.S.

サリヴァン,H.S.について

サリヴァン,H.S.(ハリー・スタック・サリヴァン)は、精神分析の中では新フロイト派に位置づけられるアメリカの精神科医です。
彼の立場は対人関係論としても知られています。

サリヴァンはニューヨーク州のノーウィッチという小さな町で生まれましたが、祖父母はアイルランドからの移民でした。
彼が産まれた時代、サリヴァン家は人種的マイノリティであり、また社会的地位は高くはなく、貧しい家庭であったようです。

奨学金を得てコーネル大学に進むものの大きく調子を崩して16歳で退学し、精神科病院に入院させられたと言われています。

その後、シカゴ医学校を卒業し、医師として病院勤務を始めます。

サリヴァンは、患者との卓越したコミュニケーション能力を持ち、中でも統合失調症患者の行動に関する明確な解釈を行うにあたって比肩する者はいないと言われていました。

特に、破瓜型と言われる重症の統合失調症の治療に携わったことで有名です。

彼は精神医学の臨床において、患者に及ぼす環境、とりわけ対人関係の影響をとても重視しました。

統合失調症の治療は現在でも非常に難しいですが、サリヴァンは、精神医学的な関わりによって統合失調症を回復させていくこともできると信じていました。

その治療観は、彼が語った「精神医学とは対人関係の学である」という言葉に端的に表されています。

新フロイト派・対人関係論は、アメリカにおいてはフロイト,S.の古典的な精神分析に反対する立場と見なされるか、少なくとも正統派に対する亜流として扱われており、アメリカ精神分析協会からも長らく仲間とは見なされないような状況が続いていました。

しかし、近年注目されている関係精神分析の源流として、再評価もされています。

サリヴァン,H.S.の関連キーワード

  1. 新フロイト派
  2. 対人関係論
  3. 統合失調症
  4. 関係精神分析
  5. 社会精神医学

サリヴァン,H.S.の補足ポイント

サリヴァンは幼少期を社会的マイノリティとして過ごし、思春期青年期には彼自身が統合失調症を患ったと言われています。

サリヴァンの生涯を語る資料の多くで、彼は自分自身の経験を生かし、統合失調症の治療において伝説的な名声を博したと評されています。

医師でも心理士でも、その人がどのような臨床実践の方法を確立するかには、その人の生い立ちが影響を及ぼす部分が大きいのかもしれません。

サリヴァンは、自らの体験を明確に捉え、それを言葉にしたり考えたりする能力が並外れていたため、自らの体験をを患者の治療に大いに生かすことができたのでしょう。

MEMO

精神医学に社会的な観点を取り入れた彼の取り組みは、社会精神医学や予防精神医学の先駆けとなりました。

彼自身の成育史の影響もあるのか、サリヴァンは人種差別問題などにも大きな関心を持ち、社会的な問題の解決に向けても奔走しました。

彼が提唱した関与しながらの観察という臨床的姿勢と共に、サリヴァンはその後の精神医学や臨床心理学に大きな影響を与えました。