マズロー,A.H.

マズロー,A.H.

マズロー,A.H.について

マズロー,A.H.(エイブラハム・ハロルド・マズロー)は、自己実現理論と呼ばれるパーソナリティ理論を提唱したアメリカの心理学者です。
ニューヨークのブルックリンで、ユダヤ人の労働階級の家庭に7人兄弟の末っ子として生まれました。

そしてウィスコンシン大学に入学し、アカゲザルの愛着研究で有名なハーロウ,H.F.のもとで行動主義心理学を学び、学位論文を書きました。

大学卒業後はいくつかの大学で教鞭を取り、1962年から2年間はアメリカ心理学会の会長も務めています。
2002年のある学会による調査では、20世紀の最も引用された心理学者の10番目に位置づけられました。

 
上述の通りマズローは、はじめに行動主義心理学を学びました。
その後、フロイト,S.の理論にも触れますが、当時の心理学の二大勢力であった行動主義や精神分析の理論だけでは人間を理解する上で不十分であると考えました。

人間が心理学的に健康を保ち成長していくにはどうしたらよいかを考える上で、マズローは人間の欲求動機を重視し、自己実現理論を打ち立てます。

また、マズローはそれまでの二大勢力の心理学に対して、第三勢力として人間性心理学を提唱し、1961年の春には『Journal of Humanistic Psychology』という人間性心理学の学術雑誌を刊行しました。
この雑誌は今も刊行され続けています。

マズロー,A.H.の関連キーワード

  1. 自己実現理論(欲求の階層説)
  2. 欲求/動機
  3. 人間性心理学
  4. 第三勢力
  5. ロジャーズ,C.R.

マズロー,A.H.の補足ポイント

人間の健康と成長を重視したマズローの心理学は、ロジャーズ,C.R.らとともに人間性心理学の代表的なものとして位置づけられています。

マズローが研究したのは、人間を部分的にではなく全体から捉え、自らの意志で生き方を決めていく力を持つ存在として共感的に相手を理解していく心理学です。

これは後輩世代にあたるロジャーズ,C.R.にも大きな影響を与えることとなりました。
マズロー自身は基礎心理学である行動主義から研究を始めましたが、このように臨床心理学にも大きな影響を与えたと言うことができます。

マズローの自己実現理論は「欲求の階層説」とも呼ばれ、今では心理学に留まらずさまざまな分野でも紹介されています。
これは、マズロー自身が心理学以外にも哲学や政治など広い領域に関心を向け、研究を行ってきた成果と言えるでしょう。

MEMO

マズローは著書の中で、金づちしか道具を持っていないと、人はあらゆるものを釘のように扱うといったことを述べています。

これは、限られた手段に頼ると通り一遍のことしかできなくなり、物事の本質を見失ってしまうという意味のようです。
過去に捉われず、人間の成長を信じて未来に向かうことを重要視するマズローの理論を端的に表している言葉と感じられます。