ひきこもりの定義
ひきこもりとは、何らかのストレスを避けるために長期間自室や自宅から出ず、社会的活動に参加しないでいることです。
厚生労働省は、「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念である」と定義しています。
ひきこもりの背景として、うつ病、社交不安症や統合失調症などがある場合もあれば、ひきこもりが生じ、続いている明確な理由がわからない場合もあります。
ひきこもりになり、その状態が続く要因には、心理的要因、生物学的要因、そして社会的要因の3つがあります。
心理的要因として、大きなストレスがかかる出来事がきっかけとなって、ひきこもりが生じることがあります。
ひきこもる前に、直面していたストレスを克服しようと懸命に頑張っていた場合ほど、いざひきこもった際の挫折感や蓄積した疲労は大きく、ひきこもりが長期化する可能性があります。
内心ではひきこもっている自分を責めている人も多いと考えられます。
また、ひきこもりが長引くと対人交流が減少し、外出への不安や緊張が高まりやすいことなども、ひきこもりが続く要因となり得ます。
次に、生物学的要因として、精神疾患や発達障害があるために社会的活動にうまく参加できないため、ひきこもりが生じている場合があります。
厚生労働省は、ひきこもりは精神疾患とは異なるものの、ひきこもりになっている人の中には、未診断の統合失調症を有する可能性も低くはないことに留意が必要だと述べています。
そのような場合は、医療機関と連携しながら、ひきこもり状態にどのように取り組むのがよいのかを考えていく必要があります。
そして、社会的要因としては、ひきこもりに対する周囲の認識が挙げられます。
学校や仕事に毎日通うのが当然だと周囲の人たちが考えていると、ひきこもっている人たちはいたたまれない気持ちになるでしょう。
本人も外に出なくてはと思いながらも、プレッシャーが高まり、外に出るハードルをさらに上げてしまうこともあります。
また、ひきこもりの支援について相談できる場所や、その相談方法を知らないと、本人や家族が孤立し、ひきこもりの長期化につながる恐れがあります。
ひきこもりの関連キーワード
- ひきこもり地域支援センター
- ひきこもりサポーター
- アウトリーチ
- 自助グループ
- 地域障害者職業センター
ひきこもりの補足ポイント
厚生労働省は、ひきこもり支援推進事業に取り組んでおり、これは3つの事業から構成されています。
1つ目は、ひきこもり支援に特化した相談窓口として、ひきこもり地域支援センターを都道府県・政令指定都市に設置することです。
同センターの設置により、ひきこもり支援についてどこに相談すればよいのかが明確化されました。
ここでは、ひきこもり支援コーディネーターが本人やその家族の相談を受けて、関係機関と連携しながら支援を行います。
2つ目は、ひきこもりサポーター養成研修などの、ひきこもり支援に携わる人材の育成です。
3つ目は、ひきこもり支援に関する相談窓口の周知や実態把握、ひきこもりサポーターの派遣などを行うことです。
ひきこもり本人や家族のもとにサポーターを派遣することで、受けられる支援に関する説明をしたり、潜在的なひきこもりの早期発見をしたりすることを目的にしています。
相談の流れとしては、多くの場合は、まずひきこもり当事者の家族が支援機関に相談し、家族や本人から状況を聞き取る所から始まります。
家族が窓口に来談することもあれば、電話で相談したり、担当者が本人の自宅を訪問するアウトリーチの形を取ったりすることもあります。
その後、状況やタイミングを考慮しながら関係機関と連携し、徐々に就労支援などを検討して、社会参加に向かっていくのが一般的です。
その他にひきこもりへの支援を受けられる所は、自治体の保健福祉センター、民間の支援団体などがあります。
それらが運営する自助グループ、フリースペース、家族会、社会体験活動などに参加することで、自室・自宅以外の居場所を得ることもできます。
就労について考える場合は、地域障害者職業センターなども利用できます。
ここでは、障害者手帳を取得していなくても、職業相談や職業評価を受けることができます。
ひきこもりの本人にとっては、ひきこもることが、何らかのストレスから身を守る方法となっている側面があります。
また、口にしなかったとしても、本人もひきこもり状態を何とかしなければと思っていることが多いものです。
ひきこもりの理由が明確ではないとしても、社会的活動に参加するように無理やり促すことは、ひきこもっている本人にとっても想像以上に大きな負担がかかる可能性があります。
ひきこもらず社会に出るのがよいことだと固定的に考えず、社会的なサポートを受けながら、ひきこもりという状況に向き合っていくことが、本人にとっても家族にとっても大切なことでしょう。