系列位置効果の定義
順番に呈示される一連の情報を記憶する課題において、呈示された情報の位置が記憶成績に影響を及ぼす効果を系列位置効果といいます。
例えば、20個の単語を1個ずつ順番に被験者に見せて、最後の単語を呈示し終えたら、覚えている単語を被験者に挙げてもらいます。
そうすると、単語リストの最初の方と最後の方で呈示された単語は比較的思い出しやすく、中間に位置する単語は思い出しにくい傾向が見られます。
リストの初めの方の単語の再生率が高い現象を初頭効果といい、後ろの方の単語の再生率が高い現象を新近性効果といいます。
リスト内の単語の位置ごとに、正しく再生できた確率をグラフにしてみると、一般的にはU字型の系列位置曲線が得られます。
系列位置効果の関連キーワード
- 初頭効果
- 新近性効果
- 系列位置曲線
- 自由再生法
- 系列再生法
- 手がかり再生法
- 直後再生
- 遅延再生
- 長期新近性効果
系列位置効果の補足ポイント
記憶課題の実施方法には、自由再生法、系列再生法、手がかり再生法があります。
自由再生法は、覚えた内容についての手がかりを与えず、また単語が呈示された順序は関係なく、内容を思い出してもらう方法です。
次に、系列再生法は、自由再生法と同じく手がかりを与えませんが、呈示された順序通りに内容を思い出してもらう方法です。
そして、手がかり再生法は、思い出す時に何らかの手がかりを与えて、内容を思い出してもらう方法です。
系列位置効果を調べる実験では、自由再生法が用いられます。
自由再生法を用いると、どのくらい思い出せるかということだけではなく、どのような順序で思い出したかということも検討することができます。
単語を覚えたり思い出したりしやすいように、被験者が情報を関連づけて覚えるなどの工夫をした場合、記憶の再生時に、意味的に関連する単語をまとめて想起するカテゴリー群化が見られることがあります。
また、被験者に自由再生をしてもらうと、1回目は、単語同士の関連性が特に無い場合はランダムな順序で単語が再生されます。
しかし、何度も自由再生を繰り返してもらうと、被験者が単語ごとに独自の関連づけをして、再生順序が次第に定まってくる主観的体制化が生じる場合があります。
単語リストをすべて呈示した後、すぐに単語を思い出してもらう方法を直後再生といい、リストを呈示し終えて、一定の時間を置いた後に単語を思い出してもらう方法を遅延再生といいます。
遅延再生では、単語を思い出す再生課題に入るまで、特にやるべきことを設けない場合と、単語リストの記憶とは無関係の作業を行わせる妨害課題を設定する場合があります。
30秒程度の妨害課題を挟んだ遅延再生を行うと、初頭効果と中間部の単語再生には大きな影響は見られないものの、新近性効果が消失しやすいことが示されています。
また、単語の呈示時間を長くすると、新近性効果にはあまり影響がなく、初頭効果と中間部の再生促進効果が見られます。
こうしたことから、新近性効果は短期記憶を、初頭効果と中間部の記憶は長期記憶を反映していると解釈できます。
リストの最初から中間部の項目は、最後の方の項目と比べてリハーサルや精緻化処理が行われやすいため、長期記憶に移行しやすいと考えられています。
その一方、最後の方の項目は直後再生の場合などは短期記憶に残っており、検索が容易であるため新近性効果が見られると考えられています。
妨害課題を用いた遅延再生を行うと新近性効果が消失することも、この考えを支持しています。
なお、中間部の項目は、初頭効果も新近性効果も受けないため記憶成績としては低下しますが、記憶の仕組みとしては長期記憶が関与していることが示唆されます。
単語リストを記憶する実験において、単語を1つ呈示するごとに妨害課題を行う方法を、連続妨害法といいます。
連続で妨害が入ると、どの単語も短期記憶に残りにくいはずですが、実際には新近性効果が見られるという結果が出ており、この現象は長期新近性効果と呼ばれます。
短期記憶と長期記憶という2つの記憶システムを想定した記憶の二重貯蔵モデルは、記憶の研究において非常に重要なモデルとなっていますが、長期新近性効果の存在は、記憶の二重貯蔵モデルだけでは記憶を説明しきれない部分があることを示唆しています。