アドボカシー

アドボカシー

アドボカシーの定義

アドボカシーとは、福祉の分野においては、自分の意思や要望をうまく伝えることができない人の代わりに、その人を支援する人が本人の意思を代弁し、要支援者の権利を擁護することです。
日本語では、権利擁護と訳されることがあります。

例えば、要介護状態になった高齢者の方が、申請すれば受けられるサービスが存在するにもかかわらず、そのサービス自体を知らなかったり、どこに申請したらサービスを受けられるのかがわからなかったりすることがあります。
そうなると、受けられるはずのサービスが受けられない状態になってしまいます。

その場合、地域の役所の担当窓口やソーシャルワーカーに相談できれば、担当職員は該当するサービスの概要や申請方法に関する説明を行い、さらに必要な手続きを紹介していくという形で、要支援者が適切なサービスを受ける権利を擁護することが可能になります。

アドボカシーの関連キーワード

  1. 権利擁護
  2. ケースアドボカシー
  3. クラス(コーズ)アドボカシー
  4. セルフアドボカシー
  5. シチズンアドボカシー
  6. リーガルアドボカシー
  7. ピアアドボカシー

アドボカシーの補足ポイント

アドボカシーは、個人や家族を対象とするケースアドボカシーと、地域や集団を対象とするクラス(コーズ)アドボカシーに分類できます。
上記の要介護高齢者の方の例は、ケースアドボカシーに該当します。

 
クラスアドボカシーは、特定の誰かを対象にするのではなく、同じ課題を抱えた複数の当事者の意思を代弁し、公的制度などが改善されるように働きかけることなどが該当します。

例えば、同じ県内でも、他の市と比べてA市は育児サービスがあまり整備されていないという場合に、A市に働きかけて制度改善を求めることで、A市内で育児に苦労している多くの人たちの意見を市に伝えることができます。

 
その他には、社会的に弱い立場に置かれやすい当事者自らが行動して、自分の意思や権利を主張するセルフアドボカシー、当事者を含む市民が主体となって行動し、不利益を被っている人を擁護するシチズンアドボカシー、弁護士などの専門家の協力のもとに権利擁護を行うリーガルアドボカシー、同じ経験を持つ人同士で協力し合って権利擁護をするピアアドボカシーなどがあります。

 
アドボカシーが持つ権利擁護の機能にはいくつかの分類方法がありますが、例えば以下の6つにまとめることができます。

1つ目は発見機能であり、要支援者が利用できていない権利がないか、権利が侵害されていないかを見つけることです。
2つ目は啓発(教育)機能であり、要支援者自身がどのような権利を持っているのかを知り、その権利の必要性や重要性を認識できるように促すことです。
3つ目は予防機能であり、要支援者の状況を把握して啓発を行いながら、権利侵害が発生しないように対策をとることです。
4つ目は救済機能であり、権利侵害が生じてしまった場合に、権利が擁護されるように働きかけることです。
5つ目はエンパワーメント機能であり、権利擁護を含めた支援を通じて、要支援者自身の主体性を高め、自己決定できるように力を引き出すことです。
6つ目は開発機能であり、地域社会で生活するにあたって、整備が行き届いていない社会資源を開拓したり、制度を改善させたりすることです。

 
すべての人が人権を尊重され、尊厳ある人生を送れるのは重要なことです。

そのためには、可能であれば支援を要する人自身が、自分がどのように生きたいのかをしっかりと意識し、生き方や日々の過ごし方を自己決定できる状態にあることが望ましいです。

しかし、さまざまな事情でそうしたことが難しい人も多くいます。
その場合は、周囲の人や専門家に働きかけ、その人達と協力し合いながら適切に権利を行使することが、人生の質を高めていくことにつながります。

MEMO

アドボカシーは、初めは福祉の分野で用いられていた概念ですが、他の分野でもより広い意味合いで使用されるようになってきています。

例えば近年では、社会的に普及している価値観や考え方などを変えるために、政府や社会に働きかける活動などの意味でも使用されています。
具体的には、政府への政策提言や、偏見や誤解を解消するためのSNSを用いた情報や意見の発信、講演会の開催といったさまざまな形態でアドボカシーが行われています。