失語症の定義
失語症は、脳の機能が損傷を受けることにより、一度獲得した言語能力を使いこなせなくなってしまい、言葉を話す能力、あるいは理解する能力が損なわれてしまった状態を指します。
失語症と言う場合は、脳の器質的な原因によるものと定義されているので、強いショックを受けて言葉を話せないなどの精神的な原因や、舌や口を自由に動かせないなど脳以外の身体的な原因による言語障害は含まれません。
また、一度獲得した言語能力を失ったものとも定義されているため、言語発達の遅れがあり、言語能力がきちんと獲得されていないためにうまく話すことができないといった状態も、失語症とは呼ぶことができません。
失語症の関連キーワード
- ブローカ領野
- ウェルニッケ領野
- 運動性失語
- 感覚性失語
- 非流暢性
- 錯語
失語症の補足ポイント
失語症は1861年にフランスのブローカ, P. P.によって発見されました。
脳の中でも言語野と呼ばれる、言葉を司る部位が損傷を受けることで生じることが分かっています。
言語野には、ブローカが発見した運動性言語中枢とも呼ばれるブローカ領野と、ドイツのウェルニッケ, C.が発見した感覚性言語中枢と呼ばれるウェルニッケ領野が含まれています。
前者が損傷を受けると運動性失語(ブローカ失語)が生じ、後者が損傷を受けると感覚性失語(ウェルニッケ失語)を生じます。
代表的な失語症はこの2つですが、他にもブローカ領野とウェルニッケ領野を結ぶ部分が損傷され、復唱がうまくできなくなる伝導失語などもあります。
運動性失語は、言葉をうまく発することができないことが主な特徴です。
流暢に話しをすることができず、話そうとしても言葉を間違えたり、つっかえたりしてしまい、自発的に話す量も減少します。
また復唱したり、音読をすることにも困難を覚えます。
話すことに比べると、話を聴いて言葉を理解する能力は保たれますが、複雑な内容にはついていけなくなることも多いようです。
感覚性失語は、言葉を理解することがうまくできないことが主な特徴です。
運動性失語の場合とは異なり、言葉を流暢に話すことはできますが、時に意味不明な言葉を発したり、言おうとした言葉と違う言葉を言ってしまう錯語が生じます。
また言葉を聞き取ることが難しいため、復唱はうまくできません。
ブローカ失語とウェルニッケ失語は混同しやすいので、ここで整理しておきましょう。
ブローカ失語では運動性失語が生じ、話すことに障害が強いタイプです。
一方で、ウェルニッケ失語は感覚性失語が生じ、言語理解に問題があるタイプです。
この2つを入れ替えた正誤問題はよく出題されるので、整理しておきましょう。