心理的離乳の定義
心理的離乳とは、思春期および青年期において生じる、家族からの精神的分離、自立を示す概念です。
思春期および青年期には、生理的・身体的成熟に伴い、それまで親に依存して生活していた子どもが、家族からの自立を試みるようになります。
一人前の人間として対等に扱われることを求めるようになるのです。
しかしその一方で、いまだ心理的には未熟な状態です。
そのため、親離れは子どもの不安をかき立て、情緒的混乱を引き起こします。
心理的離乳を表す行動は、保護、干渉しようとする親に対する自己主張や反抗として現れます。
この心理的離乳が現れる時期は、いわゆる第2次反抗期に当たるとされています。
もし、この危機を乗り越えず、親に依存し続けると、今度は成人として一人前になることが難しくなります。
親子が危機と向き合い、乗り越えようとすることは、互いの理解を深めることに繋がります。
単なる反抗として捉えるのではなく、親子が支え合って存在していることを互いが認識し、受容していく過程こそが心理的離乳なのです。
心理的離乳の関連キーワード
- 精神的分離
- 自己主張
- 反抗
- 第2次反抗期
心理的離乳の補足ポイント
心理的離乳が起こる、思春期に見られる生理的・身体的成熟が第二次性徴と呼ばれるものです。
第一次性徴とは、生まれてすぐに分かる男女の性器に見られる特徴のことです。
それに対し、第二次性徴とは思春期になってから現れる、性器以外のからだの各部分に見られる男女の特徴のことをいいます。
男子は、性器の大きさや体毛の変化、声変わり、筋肉や骨格の発達、 精通などが起こります。
女子は乳房の発達、丸みをおびたからだつきへの変化、初経などが起こります。
さて、心理的離乳は第2次反抗期に当たりますが、第1次反抗期の時期と特徴についても確認しておきましょう。
第1次反抗期とは、乳幼児期、親などの重要な他者からの制限や規制に対して反抗が顕著に生じる最初の時期で、主に2~4歳頃とされています。
この時期には、自分自身の身体を使って主体的に行動をとることが顕著になる一方、親からのしつけや干渉も顕著になるため、自分の欲求や感情が思い通りに行動として表現できない体験をします。
自他の境界が成立し、自我が発達していくとともに、欲求不満の状態を打破するため、自分の思い通りにしたいという意識が強くなります。
その結果、親に対する反抗的行動が顕著になるのです。
第1次反抗期は、自我の芽生えの指標でもあります。
外的世界に積極的に関わろうとする主体性や自発性の発達の端緒になるものと言えます。
人によっては、第2次反抗期がなかった、あるいはその時期にそれほど親に反抗しなかったということもあるでしょう。
親子関係がうまく機能していたから親にあまり反発しなかったという人もいれば、いつも親の意見に合わせていたので反抗する機会がなかったという人もいるかもしれません。
子どもは親に反抗すればいいというわけではありませんが、過剰適応という形で自分を過度に抑制することが多かった人には、対人コミュニケーション全般での課題が残される場合があります。
例えば、自分の意見の伝え方が分からない、嫌だと思っても人からの頼みを断れないといった悩みにつながる可能性もあるでしょう。