共同注意

共同注意

共同注意の定義

共同注意とは、自分と他者、そして対象との三者間でのコミュニケーションの中で生じる現象です。
自分と他者という二者が、他の第三の対象に対して一緒に注意を向けて、その対象についての認識や感情などを共有することを指します。

生まれたばかりの子どもは、自分と親、または自分とおもちゃのような、二者間の関係性の中で生活をしていますが、こうした関係性を二項関係と言います。

自分と親という二項関係に、第三の対象との関係性が加わった三項関係が理解できるようになると、共同注意もできるようになります。

 
子どもが生後9ヶ月頃になると、三項関係が分かるようになり、他者の意図を読み取ることが段々とできるようになってきます。
たとえば、親が猫のぬいぐるみを見せながら「猫だよ」と言うと、子どもは、猫という生き物について親が教えようとしていることに気づきます。

生後9ヶ月頃の子どもに見られるこうした急激な発達は、9ヶ月革命と呼ばれます。

共同注意の関連キーワード

  1. 二項関係
  2. 三項関係
  3. 9ヶ月革命
  4. 視線追従
  5. 指さし
  6. 心の理論
  7. 社会的参照

共同注意の補足ポイント

共同注意の第一歩は、他者の視線が向かう先に、子どもが自分の視線を向ける、視線追従から始まります。

子どもは次第に、自分の意図と他者の意図は共有できることに気がつくようになります。
生後12ヶ月頃になると、子どもは自ら指さしをし始め、自分が注意を向けてほしいものを周囲の人に教えるようになってくるのです。

自分が指さしている対象に、他者が注意を向けているかどうかを確認するために、対象と他者とを交互に見て確認したり、他者がもっと注意を向けるように声を出したりすることがあります。

初めのうちは、なんとなく共同注意の対象に視線を向けている状態だったものが、生後18ヶ月頃になると、より正確にその対象に注意を向けられるようになっていきます。

そして生後2歳頃までに、子どもは、自分と他者がお互いに同じ対象に注意を向けており、またそのことをお互いに理解していることも分かるようになります。

つまり、このぐらいの年齢になると、自分が見ているものと同じものを他者も見ているということが、ある程度理解できるということになります。

これは、他者が感じたり考えたりしていることを推測できるようになってきたとも言えるでしょう。
もちろん、他者の心の状態を推測する力はまだ不十分ですが、共同注意は、4歳以降に見られる心の理論の獲得につながっていくとも考えられています。

 
共同注意の獲得は、その後の子どもの発達にも大きな影響を及ぼします。
その一例として、知識の伝達が容易になることが挙げられます。

大人が子どもに「猫だよ」とだけ声をかけても、猫やそのぬいぐるみ、写真などを指差してあげないと、身の回りにあるたくさんの対象の中のどれが猫なのかが分からないでしょう。
子どもに共同注意を向けさせながら教えると、猫という言葉と、実際の猫が結びついていきます。

また、子どもが自ら指さしをすることは、言語発達と関連しています。
子どもが犬を見かけて指さしをすると、親の多くは「ワンちゃんだね」、「ふさふさだ」などと話しかけてくれるので、子どもは興味を持った対象の名称や性質について知ることができます。
そうしたコミュニケーションを繰り返すことで、子どもはさまざまな言葉を覚えていきます。

また、共同注意の一種として社会的参照があります。
これは、他者の表情などを参考にして「これは危ないから触ってはいけない」といったメッセージを読み取り、危険を回避することなどに役立ちます。

 
注意や意図を他者と共有できることを子どもが理解すると、周りの大人に何かを働きかければ、自分に注意を向けてくれるということも分かってきます。

そして、大人の関心を惹こうと、大人の動作を真似てみることもありますが、こうした模倣は、子どもが社会的行動を学び、獲得していくことに役立ちます。

MEMO

共同注意ができるようになると、他者とさまざまな経験を共有できます。

例えば、注意の対象であるおもちゃを使って親と楽しく遊ぶと、親と一緒におもちゃで遊ぶと楽しいという体験が得られます。
このような肯定的な体験を積み重ねると、親のそばを安全な場所として確保しつつ、新しい世界を探索して成長していくということが容易になります。

また、他者の意図を理解して、行動目標をお互いに共有できると、誰かと一緒に遊びやスポーツをするといったこともできるようになり、子どもの世界は大きく広がっていきます。