帰属理論

帰属理論

帰属理論の定義

帰属理論とは、ある結果の原因を何に求めるのかという帰属過程がどのように行われるのかを理論化したものです。

これは、社会的認知に関する理論であり、もともとハイダー,F.により提唱されました。

対象となる人物の内面に原因があると推論する場合を内的帰属、社会的・物理的環境や課題自体あるいは運・不運のような対象となる人物の外部に原因があると推論する場合を外的帰属と言います。

帰属理論には、ハイダー,F.の素朴心理学における帰属理論の他に、ジョーンズ,E.E.とデービス,K.E.の対応推測理論、ケリー,H.H.のANOVAモデルと因果スキーマモデル、ワイナー,B.の成功と失敗の帰属モデル、シャクター,S.の情動理論などがあります。

特にワイナーの理論は、達成課題における成功と失敗の帰属を主な対象とし、帰属の先行条件だけでなく、帰属の結果として生じる感情や動機付けの変化までを範囲に含めた考察を行っており、帰属理論の代表例の1つとして考えられています。

帰属理論の関連キーワード

  1. 内的帰属
  2. 外的帰属
  3. ハイダー,F.
  4. ワイナー,B.
  5. 認知療法・認知行動療法

帰属理論の補足ポイント

人間は、世の中をありのままに見ているのではなく、そのごく一部を取り出し、帰属させています。

また、認知要因や自尊感情などによって誤りやバイアスが生じやすいものであることが明らかにされています。

つまり、帰属過程はモデルで必ずしも説明できるものではありません。

 
こうしたことを認知療法では「認知」と位置付けています。

この認知には個人差があるため、認知の仕方により、当然、客観的な世界とは大きく異なってきます。
そのため、思い込みや誤解が生じたり、自分にとって不都合な世界に認知したりしてしまうことが多々起こり得るのです。

この自分にとって不都合な世界が、時としていろいろなマイナスの気分、例えば、混乱・悲しみ・怒りといったものを引き起こすことがあります。

この自分に都合の悪い認知、いわば認知の歪みを取り除く1つの方法として、認知療法などが存在するわけです。

 
認知行動療法においても、原因帰属は主な認知的変数の1つとされています。

成功を外的・可変的な要因に帰属し、失敗を内的・安定的な要因に帰属するなど、原因帰属の型を変容することによって、状態を脱却しようとするのです。

MEMO

シャクターがシンガー, J.と共に提唱した情動理論は、情動二要因説として知られています。

これは、まず刺激により生理的覚醒が生じ、次にそのときの状況を踏まえて生理的覚醒の原因について解釈が行われるという、2つの要因によって情動が生じると考える説です。

この説では、たとえ同じ生理的刺激を受けたとしても、刺激の受け手が状況をどう捉えるかによって、異なる情動が心の中に喚起され得ると考えます。
同じ刺激に対して、状況次第で楽しいと感じる場合もあれば、悲しいと感じる場合もあるということです。

情動二要因説やワイナーの帰属モデルのように、生理的な反応に対する認知の働きに重点を置いている理論のことを、情動の認知理論と呼びます。