愛着

愛着

愛着の定義

愛着(アタッチメント)とは、人や動物が、特定の対象に対して形成する、特別な情緒的結びつきのことを指します。
愛着形成のあり方は、乳幼児の発達はもちろんのこと、青年期や成人期などのその後の人格形成にも大きく影響するものとして非常に重要とされています。
愛着に関する研究はさまざまありますが、ここではその中でも代表的なボウルビィ, J.の愛着理論を紹介します。

 
ボウルビィは、乳幼児が母親やそれに代わる養育者から母性的な養育を受けられなくなることをマターナル・デプリベーション(母性剥奪)と呼び、良好な母子相互作用を欠いた乳幼児は、その発達において種々の障害を生ずるとしました。
このマターナル・デプリベーションの研究から、ボウルビィは母子相互作用の重要性を説き、愛着形成の理論を構築したのです。

 
ボウルビィによると、母親や養育者への愛着形成は、次の4つの段階に分けられます。

まず最初に、生後3ヶ月頃まで、人に関心を示すものの人を区別した行動は見られない段階があります。
この時期には、周囲の人に対して無差別に微笑みかけたり、手を伸ばしたりといった行動が見られます。

次に、生後6ヶ月頃までの時期、母親とその他の人物を区別した反応が見られるようになります。
ただし、この段階ではまだ母親の不在に泣くというような行動はまだ見られません。

3つ目の段階は生後2~3歳ごろまでの時期で、明らかに愛着が形成され、接近や接触を求める行動が活発になる段階です。
人見知り不安を示し、母親がいなくなると探し求めるなどといった行動が見られるようになります。

最後に、2~3歳以降の時期、愛着対象との身体的接触を必ずしも必要としない段階があります。
この時期になると、愛着対象との身体的接近を必ずしも必要としなくなり、母親がいなくても情緒的な安定を保つことができるようになります。

 
以上のような段階は、愛着の発達が順調にいった場合ですが、マターナル・デプリベーションに見られるように、実際にはこうした健全な愛着の発達が阻害される場合もあり、愛着にはさまざまなパターンがあると考えられています。

ボウルビィの研究チームの一員であったエインズワース, M.D.S.は、こうした愛着の質を測定する方法として、ストレンジシチュエーション法を開発し、乳幼児の愛着の発達を類型化しました。
この方法では、愛着のパターンを「安定型」「回避型」「葛藤型」の3つのパターンに分けましたが、こうした愛着のパターンは、乳幼児期を過ぎても、個々の人格形成に持続的に影響を与えるもの考えられています。

愛着の関連キーワード

  1. ボウルビィ, J.
  2. マターナル・デプリベーション
  3. 母子相互作用
  4. エインズワース, M.D.S.
  5. ストレンジシチュエーション法

愛着の補足ポイント

発達早期の愛着形成がその後の人格形成に関わると上述しましたが、乳幼児期に形成された愛着関係が、次第に内在化されて一定の枠組みをもったものを、内的ワーキングモデルと呼びます。
これはつまり、幼少期に形成された愛着関係が、その個人の中で1つのパターンとして身についており、その後の他者との愛着関係の結び方に影響を与えているということを意味します。
こうした観点から、愛着の概念は乳幼児期に限ったことではなく、青年や成人の対人関係のあり方も含めて、発展的に研究がなされています。

MEMO

愛着は、発達理論や精神分析の理論、行動学など、多くの分野に関連する概念です。今回は、ボウルビィの理論を中心に述べましたが、その他にもいろいろな考え方があり、現在も多くの議論がなされていることを知っておきましょう。